社説:障害者アート 福祉の視点だけでなく

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 障害者の芸術活動を支援する動きが各地で活発化している。県内でも秋田市の県立美術館で障害者の美術展「あきたアート はだしのこころ」が開かれている。個性や才能を生かした芸術活動を応援することで障害者の社会参加につなげるとともに、障害に対する理解を深める契機としたい。

 正規の美術教育を受けていない人による自由な表現活動は「アール・ブリュット」(生(き)のままの芸術)と呼ばれ、日本では障害者アートが中心的な存在になっている。専門的な知識や技術がなくても人の心を動かすことができる芸術的な価値が注目されており、国は2020年の東京五輪・パラリンピックに向け障害者アートを文化振興策の一つと位置付けている。

 鳥取県米子市では先月末、障害者の芸術活動を推進する本県などの知事連盟が初めて「障がい者アートフェスタ」を開いた。ダンスや音楽が披露されたほか、本県在住者を含む障害者の絵画などが展示された。障害者アートに長年取り組んでいる滋賀県では、東京五輪前のリニューアルを目指す県立近代美術館が、障害者の作品を収蔵品の新たな柱に加える方針だ。

 20日まで開催中のあきたアート展は、障害者の作品を多くの人に見てもらおうと、秋田市が昨年に続いて開いた。障害者らの表現活動を支援する同市のNPO法人「アートリンクうちのあかり」(安藤郁子代表)が委託を受けて運営している。

 このアート展には色彩豊かな絵や各国の神々を描いたペン画、新聞紙などで作った街並みの立体作品をはじめ約560点が展示されている。一つの小さな模様をじっくり時間をかけて描くなど、作者の思いが込められた作品が並ぶ。

 芸術作品をどう受け止めるかは、作者に障害があるかないかにかかわらず見る側の自由だ。ただ、障害者の表現は心身にさまざまな困難がある中で生み出されたものが多い。自分の持てる能力を最大限生かして表現していることを理解し、率直に評価することが、障害者が社会とつながる手だての一つになるのではないか。

 秋田市のにぎわい交流館ではきょう18日から21日まで、県内の特別支援学校・学級の児童生徒らによる「第14回わくわく美術展」が開かれ、入賞・入選作約190点が展示される。学校関係者に限らず、多くの県民が来場し鑑賞することは出品者にとって励みになるだろう。

 本県には身体、知的、精神の障害のある人が人口の1割弱の約9万人いる。行政では障害者の作品展などは障害福祉担当が受け持つことが多い。ただ、創作に意欲のある障害者たちが生き生きと活動し、その才能を開花させて個性的な作品を発信していくには福祉の視点だけでは不十分だ。芸術・文化振興を担当する部署などとの一層の連携が求められる。