北斗星(12月19日付)

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 カセットテープレコーダーにラジオが付いた「ラジカセ」を手に入れたのは学生になってからだった。友人が新製品を買うというので、頼み込んでお古を譲ってもらった

▼ラジオで流れる歌を録音できるのが利点だった。新譜のカセットテープは高くて手が出なかったので、録音用テープに好きな歌を入れ、自分だけのアルバムを作った。友人とテープを交換し、聴くのも楽しかった。もう40年以上も前の話だ

▼ラジオやカセットテープを通じて親しんだ歌手に、ボブ・ディランさんがいる。歌詞は和訳を参考にしても難解だった。でも時々、無性に聴きたくなった。曲調をフォークからロックに変えるなど、常に変革を求めてやまないスタイルに引かれていたのかもしれない

▼ディランさんの魅力は歌詞だけでも、曲だけでもない。歌詞と曲が一体となって響いてくるから、聴く者の胸を打つ。詩人の故長田(おさだ)弘さんが最後のエッセー集にそんなことを書いている

▼ディランさん自身は、ノーベル文学賞の受賞スピーチ(代読)で、「受賞は光栄」としながら「自分の歌は文学かと自問した時はない」と述べた。「僕は歌を作り、歌ってきただけさ」とも受け取れそうな表現だ

▼最近、ラジカセ人気が再燃しているという。ラジカセやレコードに慣れ親しんだ世代にとってディランさんは反権威、反権力の代表的な存在でもある。ノーベル賞を辞退しないまでもせめて「興味はないね」と言ってほしかった気がする。