社説:釜山少女像問題 冷静に合意守る努力を

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 韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦被害を象徴する少女像を市民団体が設置したことにより、日韓関係が再び険悪なムードになってきた。

 日本政府は対抗措置として駐韓大使と釜山総領事を一時帰国させたほか、経済分野の協議中断などに踏み切った。これに対し、韓国では野党を中心に反発が広がっている。

 日韓関係は経済分野だけでなく、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対処するため安全保障分野でも重要性を増している。これ以上の状況悪化に歯止めをかけるために、日韓両政府には冷静な対応を強く求めたい。

 日韓両政府は2015年12月の合意で、旧日本軍による慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認。日本は韓国が設立する元慰安婦の支援団体に10億円を拠出し、韓国は11年に別の市民団体がソウルの日本大使館前に設置した少女像について「適切に解決するよう努力する」とした。

 しかし、合意から1年たってもソウルの少女像撤去のめどが立たない上、昨年12月30日には日本政府が抗議する中で新たな少女像が釜山の公道に設置された。それを韓国政府も釜山市当局も黙認しているというのは、合意の精神に反していると言わざるを得ない。

 日本政府が少女像の撤去などを求めたのは当然だろう。ただし今後の日韓関係を考えれば、駐韓大使の一時帰国といった対抗措置にまで踏み込んだ政府の姿勢については評価が分かれるのではないか。

 国会の弾劾訴追で朴槿恵(パククネ)大統領の職務が停止された韓国は、国政がまひ状態に陥っている。朴政権の政策を軒並み否定する野党の影響力が拡大する中、日本の対抗措置に対しては韓国最大野党「共に民主党」の幹部が「(日本に拠出金の)10億円を返そう」などと反発を強め、合意の破棄を主張している。

 このままでは韓国民の反日感情が一層高まるのは必至だろう。今年前半にも行われる大統領選への出馬を狙う野党指導者らは対日姿勢を硬化させているといい、合意が揺らぐ事態も予想される。

 戦後70年と日韓国交正常化50年を機に日韓両政府が知恵を絞ってたどり着いた合意により、両国の関係はようやく未来志向で前へ動き始めていた。それだけに合意が破綻し、再び関係悪化に陥るような事態は何としても避けなければならない。

 国同士で合意したとはいえ、慰安婦問題は現在も韓国の国民感情に複雑な影を落としている。昨年末の韓国内の世論調査では「合意を破棄すべき」が59%を占めた。そうした現実を踏まえ、日本政府は合意を盾にこれ以上の強硬姿勢は慎むべきだろう。慰安婦問題を必要以上に政治問題化させないよう、与野党を問わず日韓のさまざまなチャンネルを通じて再び知恵を絞り合う必要がある。