社説:「共謀罪」審議迷走 懸念に誠実に向き合え

お気に入りに登録

 「共謀罪」の構成要件を変えて政府が今国会への提出、成立を目指している「テロ等準備罪」を新設する法案を巡る議論が、提出前から迷走している。

 既に衆院予算委員会で審議が進んでいるが、法案を所管する法務省が「法案提出後に、所管の法務委員会でしっかり議論を重ねていくべきだ」とする異例の文書を発表。野党が「(予算委での)質問封じだ」と反発したのを受け、金田勝年法相(衆院秋田2区)が自身の指示で文書を作成したことを認め、文書を撤回し謝罪した。

 民進党など野党4党は「行政府が立法府の議論の在り方に注文を付けるのは前代未聞だ」などとし、金田氏の法相辞任を要求した。菅義偉官房長官は金田氏に誠実に対応するよう注意したという。

 これまでの予算委の審議では、金田氏の答弁が二転三転するなど安定せず、審議が中断する場面が目立った。

 予算委は国の基本方針全般を議論するのが慣例で、質問内容に制限はない。まして共謀罪法案は、犯罪を行うことに合意しただけで処罰するものとして「内心の自由を侵す」「恣意(しい)的に運用されかねない」などの批判が相次ぎ、過去3度廃案になった経緯がある重大な案件だ。

 今回は、合意に加えて犯罪の「準備行為」を行った場合に限定。適用対象も従来の「団体」から「組織的犯罪集団」に変え、構成要件を厳格化したという。だが、法案に対する懸念は根強く活発な審議が必要なはずだが、金田氏の対応は議論の深化に背を向けるものだ。これでは国民の理解が得られないことを肝に銘じるべきだろう。

 予算委の審議では安倍晋三首相が前面に出て、2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、テロ対策を進めるには法整備が必要だと強調。国会が03年に締結を承認した国際組織犯罪防止条約を批准するには、共謀罪の創設が不可欠と説明する。

 政府は、条約が懲役・禁錮4年以上の刑が科される犯罪を対象とするよう求めているとして、共謀罪の適用範囲をこれまで676の犯罪としてきた。だが、対象が広すぎると懸念する公明党に配慮し、テロに関わる200~300の犯罪に絞り込む方針に転換。条約上、絞り込めないという従来の説明と異なっており整合性が問われる。

 日弁連などは条約に関する国連立法ガイドを基に、共謀罪を創設しなくても、組織的犯罪集団に対し有効な措置を講じることで条約を批准できると指摘している。そもそも法案が必要なのかという疑義であり、政府は説明責任を果たすべきだ。

 首相は犯罪構成要件に準備行為を加えたことで、これまでの共謀罪とは全く別だと訴えるが、何を準備行為とするかは捜査機関の判断に委ねられ、乱用の恐れは消えない。過去の議論も踏まえ、政府は懸念や疑問に誠実に答える必要がある。