社説:寺田氏出馬表明 論戦通じ将来像を示せ

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 3月23日に告示される知事選(4月9日投開票)に、元知事の寺田典城氏(76)が無所属で立候補することを表明した。3選を目指す現職の佐竹敬久氏(69)が既に出馬表明しており、選挙戦となることが確実となった。ほかに、民進党県連や共産党県委員会がそれぞれ独自候補の擁立を検討しているという。

 寺田氏は佐竹県政の8年を「イノベーション(革新)がほとんどなかった」と批判し、「閉塞(へいそく)感漂う秋田を変えなければならない」と指摘。「無競争は良くない。県民に選択肢を示したかった」と出馬を決意した理由を説明した。

 前回2013年は本県知事選としては初の無投票だった。まずは複数の候補者が立ち、選挙戦を通して本県の現状や将来像について論戦が交わされる見通しとなったことを歓迎したい。

 働く場を創出し若者の県内定着を図ることができるのか、歯止めがかからない少子化にいかに対応するのか、高齢者が安心して暮らせる地域社会をどう築くのか―。人口減が全国一のペースで進む本県は、こうした難しい課題を幾つも抱えている。克服に向けては県民の総力が必要になるだろう。知事選を、一人一人が地域の未来を改めて考える機会にしたい。

 寺田氏は「モノより人」に投資するとし、教育や人材育成の重要性を強調。徹底した情報公開、開かれた政策議論、しがらみのない政治を目指すとしている。「モノ」の代表格として挙げたのが、佐竹県政が秋田市と共同で整備を進める新文化施設だ。議論の進め方がオープンでないとしたほか、二十数年後に県人口70万人時代が予測される中、大型施設の必要性を疑問視し「白紙にすべき」と主張した。

 これは大きな対立軸だ。両氏の公約は今後公表されるが、具体的な対応や政策を示すことが重要だ。少子化対策や雇用創出など骨太なテーマでも、県民に違いが分かるよう提示してもらいたい。

 寺田氏は1997年から知事を3期12年務め、佐竹氏がその後の2期8年を終えようとしている。県民にとってはいずれも見慣れた顔であり、両氏の戦いに目新しさは乏しいとも言える。寺田氏は自身の出馬表明について「私でいいのかと率直に思う。若い人にも声を掛けたが、誰も出ないのは秋田の元気のなさだ」とも述べた。

 確かに、知事選に限らず首長選が無投票になるケースでは、「人材不足」を嘆く声が上がることが多い。ただし、人材がいないわけではないだろう。知事選も告示までまだ時間はある。「秋田をこうしたい」という熱い思いのある人が、フレッシュな声を上げてほしい。

 いずれ、活発な論戦が本県に元気をもたらす第一歩となる。秋田のリーダーを選ぶ選挙ではあるが、リーダー任せにせず、身近な地域の将来像を思い描きながら議論に耳を傾けたい。