社説:東日本大震災6年 避難訓練重ね風化防げ

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 岩手、宮城、福島3県などに甚大な被害をもたらした東日本大震災の発生から、きょう11日で6年になる。死者1万5893人、行方不明者2554人という未曽有の災害で、長期の避難生活などに伴う震災関連死は3県で3515人に上り、今も増え続けている。

 避難者は、ピーク時の4分の1に減ったが、東京電力福島第1原発事故が起きた福島県を中心に12万3千人に上る。災害公営住宅は計画3万戸のうち78%が完成、かさ上げ地に商店街が整備されるなど被災地の風景は着実に変化しているが、復興はまだ道半ばだ。

 いまだ3万5千人がプレハブ仮設住宅に暮らしており、経済的な理由などで転居先が決まっていない人も大勢いる。3県の主要漁港の水揚げ量は震災前の7割に回復、津波で浸水した農地の8割で営農が再開されたが、住民の生活をいかに再建できるかが重要であり、さらなる支援が欠かせない。

 自然災害から命を守るため、大震災の教訓を広く伝え、風化を防いでいくことも大きな課題だ。昨年11月22日、福島県沖を震源とするマグニチュード(M)7・4の余震が起きた際、被災地での住民の避難行動には風化を感じさせるものがあった。

 地震により、仙台港で大震災後最大となる1・4メートルの津波を観測。宮城や福島県などの沿岸に津波警報や注意報が発令された。

 宮城県石巻市は沿岸部約5千世帯に避難指示を出したが、後日調査したところ、実際に避難行動を取った人は4割にとどまっていたことが分かった。この数字には屋内で上の階に移動したケースも含まれるため、屋外に避難した人はさらに少なかったとみられる。市危機対策課は「地震の規模から大震災のような津波は来ないと判断したのだろうが、危険だ」と危機感を強めている。

 大震災では車で避難して渋滞に遭い、津波の犠牲になった人が少なくなかった。このため同市でも避難は徒歩を原則とし訓練を続けてきたが、当日は車で避難した人もかなりいて、高台に続く道路で渋滞が発生したという。宮城県防災対策課は「大震災から6年がたち、意識の部分で風化が見られる。避難行動にどうつなげられるかが課題だ」と言う。

 大震災後、本県でも津波の高さや被害想定などが見直され、それに合わせて各地で防災訓練が行われている。だが、石巻市の事例は、訓練の体験をいざという時に生かすことがいかに難しいかを表している。

 風化を防ぐのは容易ではなく、実践的な避難訓練を積み重ねるなど地道な取り組みが求められる。特に渋滞対策などは、県内ではほとんど手付かずの課題でもある。県や市町村は、被災地の避難行動の分析も参考にしながら、県民の命を守る備えを万全にしてほしい。