社説:退位特例法制定へ 安定継承の論議も急げ

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 天皇陛下の退位を実現する法整備を巡り、衆参両院の正副議長は陛下に限って退位を認める特例法の制定を求める国会見解を安倍晋三首相に伝えた。政府は見解を尊重するとしており、今国会での成立を目指す。

 陛下は昨年8月、高齢となった自身の退位への思いをにじませるビデオメッセージを公表された。だが皇位継承について定めた皇室典範には、生前の退位に関する規定はない。どのような法整備をすれば退位が可能になるかが課題として浮上し、首相は政府の有識者会議による論点整理を経て今年1月、両院正副議長に国会意見の取りまとめを要請していた。

 国会見解は各党・会派からの意見聴取を経てまとめられた。退位を認めることではおおむね一致したものの、退位に必要な法の形式では意見が割れた。

 野党の多くは「退位は典範改正でしか対応できない」(民進党)などと恒久制度化を主張した。政府・与党は、天皇退位の年齢など一定の要件を設けて恒久的な制度にするのは困難だとして、陛下一代の特例法としたい意向を示した。

 野党の合意を取り付けるため自民党は、▽「特例法は典範と一体をなす」と典範の付則に明記する▽特例法は将来の天皇退位の先例になり得る―などを国会見解に記す考えを伝えて歩み寄った。これに対し多くの野党が「先例になれば(特例法が)事実上の第二皇室典範になる」(民進党)などと了承、今国会での制定が確実になった。

 国会見解は、退位に至る事情を特例法に記すべきだとし、その事情の一つとして、陛下の思いに対して国民が共感していることを書き込むよう求めた。憲法が天皇の地位について「国民の総意に基(もとづ)く」と定めていることを考慮したためだ。

 ただ、共同通信社が1月と今月11、12日に行った世論調査では共に、典範を改正し退位の恒久制度化を望むという人が6割を占めた。各党・会派が「国民の総意」を重んじるのなら、特例法を選んだ経緯や理由に関しても理解が得られるよう説明を尽くさなければならない。

 陛下の退位に道筋がついたとはいえ、典範に退位後の天皇の呼称・敬称や退位時の儀式の要否などに関する定めはなく、例外的な規定として特例法に記すことになる。同じく天皇退位を想定していない皇室経済法(皇室費)や宮内庁法(補佐体制)などの改正作業も、遅滞なく進めていく必要がある。

 退位論議を通じて浮き彫りになった「安定的な皇位継承」という課題についての論議を加速させることも不可欠だ。国会見解はその方策として、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設の検討を促した。政府はこれに消極的だが、皇族は減少しつつある。将来にわたる皇室の在り方を探るのであれば、検討すること自体を拒む理由はないはずだ。