北斗星(3月21日付)

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 東京電力福島第1原発事故は想定を超えた天災なのか、それとも対策の不備による人災なのか。事故で避難した住民が起こした訴訟の判決で、前橋地裁は国と東電の過失を認め「人災」と結論付けた

▼判決は、当時公表されていた地震の長期予測に基づけば東電は巨大津波を予想でき、対策を取っていれば事故は防げたと認定。国は規制権限がありながら東電を指導しなかったとして、東電と同等の責任があるとされた

▼2012年に国会事故調査委員会がまとめた報告書は「事故が『人災』であることは明らか」と断定したが、司法が国と東電の責任を認めたのは初めてだ。判決は、東電が暫定的な津波対策さえ行わず、安全性より経済合理性を優先させたと批判した

▼事故調の指摘もこれに符合する。国の規制当局と東電は、何度も津波対策を取る機会があったのに、それぞれの組織に都合のいい判断をして対策を先送りにするなどしたという

▼冷静に考えれば安全を軽視して成り立つ経済活動などあるはずもないのに、近視眼的に組織の利益が優先される不可解さ。組織というのは厄介だ。相次ぐ企業不祥事も内輪の理屈に縛られ外部を欺く例が多い

▼南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報が、廃棄したはずの陸上自衛隊から出てきた問題では、防衛省幹部が事実の隠蔽(いんぺい)を指示したとされる。ないものが出てきては恥になると考えたのか。組織防衛のつもりが、信頼を地に落としてしまった。