社説:「共謀罪」審議入り 成立ありきは許されぬ

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 共謀罪の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が、きょう衆院で審議入りする。政府・与党が今国会中(会期末6月18日)の成立を目指しているのに対し、民進など野党4党は廃案に向けて徹底抗戦する構えだ。

 法案は刑法などに定められた277の犯罪を対象に、計画段階で処罰できるようにする内容。政府は2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えたテロ対策として、未然防止の重要性を訴える。

 共謀罪法案は過去に3度提案されたが、犯罪に合意しただけで処罰されかねないとして「内心の自由や表現の自由を脅かす恐れがある」などと批判が高まり、いずれも廃案になった経緯がある。政府は、今回の法案は適用対象を「組織的犯罪集団」に限定、摘発には犯罪の計画に加えて現場の下見などの「準備行為」が必要とし、要件を厳格化したと説明。対象となる犯罪も従来の676から絞り込んだと過去との違いを強調している。

 だが政府は、正当な活動をしていた団体も目的が一変すれば処罰対象になり得るとしており、一般市民に適用される恐れは消えていない。「一変」を認定するのは捜査当局であり、恣意(しい)的な解釈がなされないかなど明確化すべき論点は多い。

 共同通信社が法案閣議決定後の先月下旬に行った世論調査では、法案に反対する人は40・0%、賛成は38・8%だった。国民の賛否は割れており、慎重で丁寧な議論が求められる。今国会での成立ありきで、与党が強引に審議を進めるようなことがあってはならない。

 政府は、効果的なテロ対策を講じるためには国際組織犯罪防止条約の締結が必要で、それには「共謀罪」の新設が不可欠と説明する。

 しかし、法学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」は、同条約が想定するのは利得を目的にマネーロンダリング(資金洗浄)などを継続的に行うマフィアや暴力団であり、法案が対象とする組織的犯罪集団とは性質が異なると指摘。条約締結のための「国連立法ガイド」は共謀罪の導入を必須としていないとして政府の説明を疑問視し、「立法の合理性・必要性は厳密に立証されるべきである」と主張する。

 外務省が03年に作成した同条約に関する説明書でも、犯罪集団を「物質的利益を得るため行動する」団体と定義している。そもそも、政治的、宗教的な目的を掲げることが多いテロ組織を対象とした条約でないことは明らかだろう。「目的をすり替え、テロを掲げて反対しにくくしている」との野党の批判に、政府は正面から答えるべきだ。

 法案の対象犯罪になっているハイジャックなどについては、現行法の予備罪で対処できるとの指摘もある。懸念の多い「共謀罪」新設の前に、現行法で対応できるケース、できないケースの区分が必要ではないか。