社説:ギャンブル依存症 実態把握し対策を急げ

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 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備に向け、政府は安倍晋三首相を本部長とするIR整備推進本部を立ち上げ、カジノの運営基準の検討を本格化させている。重要な検討事項となるのがギャンブル依存症対策だ。首相は「世界最高水準の規制を導入する」としているが、国民の不安を払拭(ふっしょく)するためには、実効性のある方策をしっかり示す必要がある。

 国内では競馬、競輪、競艇などの公営ギャンブルや、射幸心をあおるパチンコ、パチスロなどが気軽にできる環境にあり、依存症が後を絶たない原因とされている。これにカジノが加われば、国内ではさらに依存症の人が増える懸念がある。

 IR整備には、依存症や治安などに与える負の影響をしっかり抑えられる対策を打ち出すことが大前提だ。自民党が来月にも依存症対策の強化に関する基本法案を議員立法で国会に提出するが、有効な解決策となるかに注目したい。

 厚生労働省は2014年、ギャンブル依存症の疑いのある人が成人の4・8%に上るとする推計を初めて公表した。全国推計数は536万人だった。一方で厚労省が先月末に発表した調査では、依存症の疑いのある人が2・7%、全国推計数約280万人だった。数字だけ見ると、この数年で依存症を疑われる人がほぼ半減したことになる。

 しかし先月発表の調査は対象区域が東京、大阪、名古屋などの大都市で、専門家が依存症の人の割合が高いと指摘する地方は対象外だった。さらに14年発表の調査に比べ、調査対象者が少なく、回答率も45%と14ポイント低かった。

 依存症の特徴的な症状は「賭け事をしていることを周りに隠すこと」とされる。依存症の疑いのある人の多くが回答を拒否した可能性はなかったのか検証が必要だ。カジノ整備を前進させるための恣意(しい)的調査と勘ぐられないためにも、政府には対象を広げるなどした全国的な調査を求めたい。

 ギャンブル依存症は、賭け事に没頭し自分を制御できなくなる精神疾患。アルコールや薬物と同様に予防のための啓発事業も不可欠なはずだが、これまで国は包括的な対策を講じてこなかった。依存症が大きくクローズアップされている今、カジノの対策はもちろんだが、それ以外の賭け事にもしっかり目を向けるべきではないか。

 秋田市へのIR誘致の動きがある本県でも県民を巻き込んだ議論が求められる。依存症が原因で多重債務や抑うつ状態に陥ることもあり、自殺予防とも無関係ではない。県民の健康を守る意味からも県には独自に依存症対策に取り組んでほしい。

 県内では近年、各地に自助グループが発足し、依存症の人やその家族らが定期的に集っている。周りの支えで依存症を克服した人もいる。悩んでいる人は参加してみてはどうだろう。