社説:憲法施行70年 国の形熟考する機会に

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 日本国憲法はきょう3日、施行70年を迎えた。明治期に制定された大日本帝国憲法の下で起きた戦争への反省などを踏まえ、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を基本原則とする。

 戦争放棄や戦力不保持を定めた9条に象徴される平和主義の理念は国際社会から評価されており、1947年の施行以来、改正されたことはない。だが、今年の憲法記念日はこれまでと意味合いが違う。国会は衆参両院とも改憲勢力が3分の2を超す議席を占め、改憲の発議が現実味を帯びているからだ。

 安倍晋三首相は一昨日、都内で開かれた憲法改正を目指す超党派議員の大会で「改憲という大きな目標に向かって、この節目の年に必ずや歴史的一歩を踏み出す」と決意表明した。衆参両院の憲法審査会では、改憲項目の絞り込みに向けて議論が進められている。

 改憲が具体的な政治課題となっていることを国民は正面から受け止めなければならないが、そもそも改正が必要なのかどうかをじっくり考えたい。

 改憲を宿願とする安倍政権の下、日本の安全保障政策は大きく変容した。2014年7月、歴代内閣が現行憲法では許されないとしてきた集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更を閣議決定。多くの憲法学者から憲法違反だとの指摘が相次ぐ中、その趣旨を盛り込んだ安全保障関連法が与党の採決強行で成立、施行された。

 1954年に自衛隊が発足して以来、専守防衛が国の基本方針だ。密接な関係にある他国への攻撃を自国への攻撃とみなして反撃する集団的自衛権は、9条の理念を逸脱していないか。活動範囲の大幅な拡大など、自衛隊が戦闘に巻き込まれるリスクは高まっている。

 こうした状況下で議論される改憲については、その狙いが何なのか、憲法の基本原則はどうなるのか注視する必要がある。

 国民の権利を制限しかねないような動きも目立つ。14年に施行された特定秘密保護法は、国民の「知る権利を侵害する」との懸念が根強い。政府が今国会での成立を目指す共謀罪の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案についても、「憲法が保障する内心の自由を脅かす」などと反対の声が上がっている。

 自民党は12年に「国防軍」の創設や「国民の義務」などを盛り込んだ保守色の強い憲法改正草案をまとめている。安倍首相(党総裁)は草案について「そのまま憲法審に提案するつもりはない」としているが、これまでも9条改正にはたびたび言及してきた。野党は、9条に集団的自衛権などを明記しようという狙いがあると警戒する。

 憲法の改正は国の形を変え、その影響は国民全体に及ぶ。憲法に対する考えや方針を各党は国民に丁寧に説明すべきだ。国民の側も改憲の是非について熟考することが求められる。