社説:木質建材「CLT」 木高研の技術実用化を

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 能代市の県立大木材高度加工研究所(木高研)が、強度に優れた木質建材として注目される「クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT)」の生産拡大と普及を目指して技術開発に力を入れている。国産材活用や林業活性化に向けて国がCLT生産を後押しする中、本県も市場ニーズをつかんで秋田杉の需要拡大につなげたい。

 木材はこれまで主に柱や梁(はり)など「線材」として建築に使われてきた。CLTは1枚に組んだ板を繊維の向きが交差するよう何層にも重ねたパネル部材で、壁などとして面で建物を支える。コンクリート並みの強度を持ちながら重さは約6分の1と軽く、断熱や耐火性も高い。

 日本CLT協会(東京)によると、CLTは中・高層の建物も木造化することで環境負荷の低減に寄与しようと1990年代に欧州で開発された。集合住宅や商業施設建設などで普及が進んでおり、工期短縮のメリットもあるという。

 日本国内では、2010年ごろからCLT導入を見据えた取り組みがスタート。CLTの建築基準が制定された昨年は「普及元年」と位置付けられ、20年の東京五輪・パラリンピック関連施設での活用が見込まれている。こうした流れに本県も乗り遅れないようにしたい。

 ただ、事業化には課題もある。CLTパネルは大型サイズで長さ12メートル、幅3メートル、厚さ30センチ以上になるが、製造には10億円以上の大型プレス機を導入する必要がある。大型パネルを製造できる工場は国内に数カ所しかなく、県内はゼロ。国産材を使った場合の1立方メートル当たりの単価は鉄筋コンクリートの約2倍の15万円で、製造コストの低減も不可欠だ。

 そうした中で、木高研は大型プレス機に頼らなくて済む独自製法を開発した。長さ2メートル、幅1メートル程度のCLTパネルの両端に凹凸を施し、複数を組み合わせることで強度を保ちながら大型化できるものだ。県内企業でも既存のプレス機で対応可能といい、県の委託事業として能代市の企業が生産体制を整えた。

 この製法を生かそうと木高研は土木分野に着目。老朽化した橋を架け替える際、コンクリート床をCLTにして軽量化を図れば橋脚の補強が不要となり、総工費が抑えられるという。

 木高研は今年3月に床をCLTにした橋を仙北市田沢湖の県有林内に国内で初めて設置、耐久性や防水性を検証している。国内に長さ2メートル以上の橋は70万カ所以上あるとされ、県も小型パネルの需要調査を実施するなどして企業を支援する方針だ。

 国は24年度までにCLTの年間生産量を現在の約10倍となる50万立方メートルとする目標を掲げ、企業に対し設備費の一部を助成している。県内では伐期を迎えた秋田杉の需要開拓が課題となっているだけに、木高研の技術活用を軸にCLTの事業化を官民共同で検討したい。