社説:県内イノシシ増加 農業被害に警戒強めよ

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 県内でイノシシの目撃情報が増えており、農作物が食い荒らされる被害が出始めている。イノシシは短期間に増える可能性があるだけに、県、市町村、猟友会など関係機関が連携し、被害を食い止める対策を先手先手で講じてほしい。

 県自然保護課によると、2012年2月に湯沢市秋ノ宮で成獣の雄1頭が捕獲されて以降、イノシシの目撃情報が増えている。11~13年度各2件(2頭)、14年度5件(5頭)、15年度6件(8頭)と推移。それが16年度は29件(42頭)と一気に増加した。昨年は大館市、仙北市で新たに出没が確認されるなど、県内のほぼ全域に生息が拡大しているとみられる。

 16年度までは三種町での1件のみだった農業被害も拡大が懸念される。本年度は5月に北秋田市で、今月10日に大館市でジャガイモの食害がそれぞれ見つかったほか、秋田市太平では4月に水田が掘り起こされる被害があった。まだ数は少ないが、農作物被害の多発に備えて警戒を強めるべきだ。

 イノシシの生息域は近年、温暖化などを背景に北上。福島、宮城、山形、岩手各県では農業被害が頻発している。4県の15年度の被害総額は約1億6千万円に上る。

 山形県では3頭が捕獲された04年度以降、生息数が急増。15年度末の推定個体数は約1900頭に上り、同県担当者は「予想を上回るペースで増えた」と振り返る。16年度は有害駆除や狩猟による捕獲数が単年度目標の440頭を超える見込みだという。

 仙北市に隣接する岩手県雫石町ではイノシシの出没が16年2月までなかったが、16年度は目撃が37件、農業被害が93万円(201アール)に及んだ。2カ所では稲が踏み荒らされ、全く収穫できなかった。このようにイノシシの被害は一気に広がる恐れがあることを肝に銘じる必要がある。

 県は本年度、イノシシを有害駆除対象に加え、「発見したら駆除」の方針を打ち出している。さらに11月ごろから湯沢市でおりを設置しての試験捕獲に乗り出す計画だ。

 ただし県内各地の猟友会は慢性的に人員が不足している。人的被害が発生する恐れの強いクマと違い、イノシシの場合は行政が猟友会に有害駆除を依頼するのは難しいという。狩猟免許取得者の数を増やし、「発見したら駆除」できる態勢をしっかりと構築することが急務だ。

 本県にとってはイノシシの個体数がそれほど多くないとみられる今が、隣県からの侵入阻止と、県内に生息させない対策を取るべき時期である。目撃が頻発している湯沢市、由利本荘市などは大きな農業被害がいつ出てもおかしくない状況にある。県はこうした地域を重点対策地域に据えて一斉捕獲を行うなど、実効性のある対策を検討してもらいたい。