社説:稲田氏発言 防衛相として不適格だ

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 稲田朋美防衛相が東京都議選の自民党候補の集会で応援演説し、「ぜひ2期目の当選、本当に大変だから、お願いしたい。防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と訴えた。自衛隊の政治利用であるとともに、行政の中立性を揺るがす信じ難い発言だ。

 自衛隊法では、自衛隊員が特定の候補や政党などを支持する目的で公私を問わず影響力を行使することなど、多くの政治的行為を禁止している。防衛省職員も国家公務員法で政治的行為を制限されている。今回の発言はこれらの法律を無視するもので、さらに「防衛相として」と地位を利用した投票の呼び掛けとも受け取れ、公選法に抵触するとの指摘も出ている。

 稲田氏は「誤解を招きかねない」と発言を撤回したが、この発言に誤解の余地などないだろう。組織を私物化するかのような感覚には驚くばかりだ。政治的中立が求められる自衛隊を統括するのに不適格なのは明らかだ。ところが安倍晋三首相は、早々と稲田防衛相に続投を指示した。民進党など野党4党は、首相が稲田氏を罷免するよう求める声明を発表。首相の任命責任を追及するため、臨時国会召集を要請する方針だ。

 稲田氏はこれまでも問題発言を繰り返してきた。先の通常国会で、学校法人「森友学園」の問題に関し、弁護士として学園との関わりがなかったか問われ「法律的な相談を受けたこともない」と答弁。その後、学園が原告の民事訴訟の代理人として出廷していたとの裁判所の記録が明らかになり、「記憶に自信があり確認せず答弁した」と謝罪に追い込まれた。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)を巡っては衆院予算委員会で、首都ジュバで昨年7月に起きた大規模戦闘を「武力衝突があったが、法的な意味での戦闘行為ではない」とし、「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」とこじつけとも映る理屈を展開。野党から「戦闘行為の隠蔽(いんぺい)だ」などと批判を浴びた。

 さらに、南スーダンに派遣された陸上自衛隊部隊の活動日報が廃棄された問題では、稲田氏の目の届かないところで日報の電子データが隠されたりしていたことが明らかになり、「シビリアンコントロール(文民統制)が利いていない」と、防衛相としての資質に野党から疑問符を突き付けられた。

 菅義偉官房長官は今回の発言を受け「誤解を招くような発言をすべきでない」と稲田氏に苦言を呈し、「しっかり説明責任を果たしてほしい」と述べた。そもそも誤解しようのない発言ではあるが、稲田氏は何がどう誤解され、真意はどこにあるのかきちんと説明すべきだ。続投を指示した安倍首相の丁寧な説明も求めたい。そのためにも政府は臨時国会召集に応じる必要がある。