社説:県内ナラ枯れ被害 拡大阻止へ対策強化を

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 県内でミズナラやコナラなどの広葉樹が枯れる「ナラ枯れ」の被害が拡大している。昨年度の被害量は約1万6千立方メートル(約5万3千本)と全国で奈良県に次いで2番目に多かった。県、市町村は抜本的な対策を打ち出せておらず、さらに被害が増えるのは確実だ。

 ナラ枯れは昆虫のカシノナガキクイムシが原因。樹内に侵入したムシに付いているナラ菌によって樹木の細胞が死に枯れる。被害により自然景観が著しく損なわれるほか、土砂崩れや雪崩などの災害の引き金になることが懸念される。

 ナラ枯れ被害はかつての松くい虫と同様、東北地方を北上している。県内では2006年度ににかほ市で被害が初確認され、12年度に民有林被害が初めて1万本を超えた。その後も北上する形で被害は拡大、15年度2万9千本、昨年度4万6千本と急激な上昇カーブを描いている。昨年度は能代、三種、仙北、美郷の4市町で新たに確認され、被害のあった市町村数は15に上った。

 ナラ枯れが爆発的に増える様子は、湯沢市の民有林被害状況で一目瞭然だ。12年度に1800本だった被害木は、14年度5700本、15年度1万2300本、昨年度2万5800本と急増した。市では、県の「水と緑の森づくり税」を活用して被害木の伐倒・薫蒸処理に取り組んでいるが、手を付けているのは一部だけで被害拡大に歯止めをかけられずにいる。

 同税の事業対象は、景観を損ねる場所と道路沿いなど人的被害の恐れがある場所の被害木に限定されている。それを考えれば男鹿、由利本荘、横手市など被害が年間3千本を超える地域がいつ湯沢市の二の舞になってもおかしくない。

 県は本年度、ムシが入りやすい高樹齢の未被害木を予防的に伐採する「被害拡大防止緊急対策事業」に乗り出す。伐採する森林組合や林業関係者に1立方メートル当たり3千円を助成する。まだ被害の出ていない隣接地で重点的に高齢木を伐採し、林の若返りを図り、被害の拡大を抑え込む狙いがある。高齢木を伐採する際には、別の補助制度を併せて利用することができる。

 ナラ枯れの急増には、伐期を迎えたナラが利用されなくなっていることが背景にある。本県のナラ材は良質なものが多いとされるだけに、林業関係者には未被害木の伐採を進め、パルプ材や建材など多様な活用方法に目を向けてもらいたい。

 深刻な事態に陥っているのは、枯れたナラの多くを放置してきた県などの対応が一因だ。被害の初確認から11年がたち、被害地域が県内の半分以上に及んでいる。この時点での緊急対策事業は遅きに失した感がある。被害予防の対策だけでは被害の拡大に歯止めをかけることは困難であり、県は責任をもって既に被害が広がっている地域の対策も強化する必要がある。

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