社説:カジノ運営ルール 依存症など懸念拭えぬ

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 政府の有識者会議が、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の運営ルールに関する報告書をまとめた。

 カジノ解禁に対しては、ギャンブル依存症を増加させるとして国民の不安が根強い。そうした状況を踏まえ、報告書にはカジノ利用に関して日本人を対象とした入場回数制限や入場料徴収などが盛り込まれ、同会議は「世界最高水準のカジノ規制」を打ち出したとしている。

 しかし、入場回数の制限や入場料の金額など具体的な基準は報告書に明示されておらず、肝心な部分の議論は先送りした形だ。依存症対策として十分とは言えず、政府は議論を一層深めて国民が納得できるような対策を示すべきである。

 報告書はIR整備推進法が昨年末、自民党の主導で成立したのを受け、学者らによる「IR推進会議」が4カ月かけてまとめた。IRを整備する当初の区域数は2~3カ所が有力視され、事業認定は早くても2020年以降とみられている。

 注目されていたギャンブル依存症対策について、報告書ではカジノへの1週間・1カ月単位での入場回数制限や入場料徴収に加え、依存症患者や家族から申告があった人については入場を規制できるとした。カジノ内には現金自動預払機(ATM)の設置を禁じ、事業者には依存症予防のための相談窓口設置や情報提供を義務付けることなども提言している。

 これに対しては、依存症の専門家から効果を疑問視する声も上がっている。入場回数を規制しても利用金額や滞在時間に制限がなければ、対策として不十分だとの指摘だ。また、入場回数制限は入場時に提示を義務付けるマイナンバーカードによって行うとしているが、カードの普及率は1割未満にとどまっており、推進会議内にも「現実的ではない」との意見がある。規制の在り方については、もっと踏み込んだ検討が必要だ。

 政府はIRの整備によって「地域経済の振興」を図ることを重点目標の一つに掲げているが、報告書からはその明確な道筋も見えてこない。

 報告書ではIRの認定要件としてカジノや国際会議場、ホテルなど計5施設の完備を挙げ、「国際競争力の高い滞在型観光地を形成する中核施設」と位置付けた。IRの誘致に乗り出した地方からは、そうした趣旨に合致した大規模施設を整備するのは難しいとの不満が出ている。報告書では各地に観光客を送り出すためIR内に「案内所の設置」も義務付けているが、結局は大都市中心の政策になるのではとの懸念は拭えない。

 政府は報告書を基にIR実施法案を作成し、秋に想定される臨時国会に提出する方針だ。依存症対策の充実と併せ、IRによって地域経済の振興が果たして可能なのかどうかについても政府は国民にしっかり説明することが求められる。