北斗星(8月10日付)

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 県発行のフリーマガジン「のんびり」の編集長だった藤本智士(さとし)さん(43)=兵庫県西宮市住=の著書2冊が相次いで出版された。この人、風貌は穏やかだが、心は熱いとみた

▼「のんびり」は2012年から4年間にわたって年4回、毎号2万部が発行された。秋田の魅力を全国に伝えるのが目的だったが、なんでも寒天に固めたがる食文化や、池田修三という版画家、酒造りの奥義など、秋田に暮らす者にとっても新発見な話題が詰まっていた

▼新著のうち「風と土の秋田」(リトルモア)は、「のんびり」傑作選。登場する人々はみな明るい。人口や経済力で測れば最後尾の秋田だが、決してビリでない(ノン・ビリ)という、雑誌名に込めた藤本さんの強い思いが伝わってくる

▼2冊目の「魔法をかける編集」(インプレス)は編集力を「メディアを活用して状況を変化させる力」と定義して、雑誌や本づくりで培った手の内を惜しげもなく公開する

▼藤本さんはいま、インターネット上で読む「なんも大学」で秋田を紹介している。紙の雑誌に比べて軽く見られがちなウェブマガジンだが、ネット検索によって記事は時空を超えて個人に直接届く。それだけに「未来に向けてどっしり腰据えて作らなきゃいけない」という

▼「のんびり」も「なんも大学」も、取材相手とのやりとりを要約せずに文章と写真で再現し、現場での編集者の感動や喜びも伝える。そんな「のんびり流」は地域誌編集の標準になりつつある。