社説:被災した文書・写真 修復態勢の拡充検討を

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 大仙市アーカイブズ(市立公文書館)が、7月の記録的大雨で泥にまみれた市内の民間保育園の文書や写真の修復を進めている。持ち込まれた園児の記録やアルバムを乾燥させて汚れを取り除き、デジタルデータ化までもっていく作業だ。

 東日本大震災で文書の修繕に携わった女性職員ら2人が取り組んでいるが、作業の進捗(しんちょく)状況は「4割ほど」。紙質や汚れ具合によっては、修復に1年を要するものもあるという。

 災害時は住民の安全確保はもとより家屋の修復が優先されるのは当然で、歴史的文書や行政文書の保護も重要だ。一方で、個人の思い出などが刻まれた文書や写真を失った住民の喪失感は想像以上に大きいという。修復方法が分からず、諦めているケースも多いとみられる。

 近年は自然災害が相次いでいるだけに、被災した公文書に加え民間文書の修復にも協力する態勢を行政などが連携し検討すべきではないか。修復技術の習得者がどの機関に何人いるかの情報を共有するだけでも、被災者やボランティアへの情報提供や協力が円滑に進むはずだ。

 大仙市で修復されているのは文書125冊のほか卒園アルバムや多数の写真など。文書には新聞紙を挟んで水分を吸わせる。写真にはキッチンペーパーを挟んで一枚一枚乾かすなど、地道で根気の要る作業が続く。CD―ROMやUSBメモリーの修復にも取り組んでいる。

 住民の「思い出」を修復する作業が注目されたのは1995年の阪神大震災。ボランティアが、がれきに埋もれたアルバムなどを拾って歩いた。当時ボランティアだった一人は「何が重要かの物差しは個人で異なる。文化的価値の高い物だけでなく、普通の人の思いが詰まった物を見つけて修復させることの大切さを痛感した」と語る。

 2011年の東日本大震災では、全国の公文書館などのスタッフが「文書レスキュー」として被災地に入ったほか、修復技術を持つNPOなどのボランティアも公文書や個人の写真の修復に当たった。各機関が連携し、それぞれの得意分野を生かす役割分担ができたという。

 県地域防災計画の災害ボランティア活動支援指針(03年策定)は、県と市町村によるボランティアのニーズの収集、情報などの提供をうたい、対象の一つには「古文書等歴史資料の救済・保存の補助」が挙げられている。県公文書館ではこれまで指針の適用例はないというが、大震災の教訓も踏まえれば「救済・保存」に努めるのは地域の文書全般と捉えるべきだろう。

 自然災害が多発傾向にある中、県内でも民間文書の修復が必要になるケースが増えることも予想される。今回の大仙市での取り組みを機に、公文書館や自治体はNPOなどと連携し、万一被災した際に個人の「思い出」を修復・保全する対策の具体化を急いでもらいたい。