社説:日産の無資格検査 安全軽視の原因究明を

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 日産自動車が国の規定に反し、資格のない「補助検査員」に新車の最終検査を行わせていたことが明らかになった。それを隠そうとする悪質な偽装工作も発覚し、無資格検査問題は深刻の度を深めている。最も重視すべき安全性を軽視し、顧客らの信頼を裏切った。

 無資格検査は、神奈川、栃木、京都、福岡の国内全ての完成車工場で行われ、日産は今週中に販売済みの24車種、約121万台のリコール(無料の回収・修理)を国土交通省に届け出る予定。検査最終段階のエンジンやブレーキなどの安全性のチェックは会社の技術教育を受けて認定された検査員が行う規定だが、日産では一部を無資格の補助検査員が行うことが常態化していた。

 さらに、補助検査員が認定検査員のはんこを借りて書類に押印し、認定検査員が作業したように見せかける偽装も横行していたという。これでは、自動車メーカーの根幹である安全第一の姿勢を企業自らが放棄したことになる。専門家も「以前から組織的にやっていたとすれば三菱自動車の燃費不正より深刻」と、その点を問題視している。

 どんな理由があって補助検査員にこうした業務をさせていたのか。偽装工作に至った経緯はどうだったのか。そして、それは組織的だったのか。日産は消費者が納得できるよう説明すべきだ。

 日産は1990年代に経営危機に陥ったが、仏大手ルノーの傘下に入り、ルノーから派遣されたカルロス・ゴーン氏が2万人以上の人員削減を断行するなどして業績をV字回復させた。日産とルノーの連合はことし上半期(1~6月)の世界販売台数で初めて世界首位に躍り出た。一方で、こうした徹底した合理化や経費削減により、生産現場に何らかのひずみが生じ、足元の安全性がなおざりにされた可能性もある。

 西川広人(さいかわひろと)社長は記者会見で「検査員の自覚が欠如していた。手続きの軽視があった」との認識を示した。これは作業・管理は「現場任せ」と受け取られかねない発言だ。経営陣は、人員配置や作業内容など現場の実態を把握できていなかったことに、もっと危機感を持たなくてはならない。

 日産は、第三者機関による調査を行い、今月末までに具体的な対策などを国交省に報告する予定だが、徹底的に調査するとともに、しっかりと説明責任を果たす必要がある。

 リコール対象の車のユーザーらに対しては迅速で誠実に対応することが求められる。県内でも対象車が数多く販売されている。県内の販売会社には、顧客が不安にならないよう真摯(しんし)に対処してもらいたい。

 合理化一辺倒の体質が安全性軽視につながった面はないのか。不正の原因を明らかにした上で、新たな管理体制を構築することが求められよう。