北斗星(10月7日付)

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 昨年、ノーベル文学賞作家を秋田に呼ぼうという動きがあった。招こうとしたのはベラルーシに住む2015年の受賞作家、スベトラーナ・アレクシエービッチさんだ

▼1986年に起きた隣国ウクライナのチェルノブイリ原発事故で、国境を越え被災したごく普通の人たちの声をまとめた記録文学「チェルノブイリの祈り」を書いたジャーナリストでもある。ベラルーシへの医療支援や交流を続けてきた県内の関係者がアレクシエービッチさんを訪ね準備を進めていた

▼最終的に体調の問題などで来県はかなわなかったが、来日は実現し、福島第1原発事故で避難を余儀なくされた福島の人々と交流した。講演では「国は人の命に全責任を負うことはしない」と訴えている

▼昨年の文学賞は、プロテストソング(抗議の歌)で知られる米国の歌手ボブ・ディランさんに贈られた。強い社会性が選考の流れと思っていたが、今年の文学賞は長崎市生まれの英国作家カズオ・イシグロさんに決まった

▼イシグロさんは端正な文体で知られ、選考が伝統的な小説に回帰したという見方がある。代表作「日の名残り」では、老執事の目を通じて人間の感情と社会の変遷を丹念に描いた

▼文学賞を巡っては、ブックメーカー(賭け屋)の予想が注目される。毎年本命視される村上春樹さんは今年も受賞を逃した。候補や選考過程を知りたいところだが、選考主体のスウェーデン・アカデミーが情報開示するのは50年後のこととなる。