社説:座間事件とSNS 発信のリスク考えよう

お気に入りに登録

 神奈川県座間市のアパートで9人の切断遺体が見つかった事件は、死体遺棄容疑で逮捕された男と被害者がツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)で知り合ったとみられている。知らない同士が気軽につながれる便利さの陰に、危うさが潜むことを改めて印象づけた。

 インターネットは既に社会基盤となっており、避けて暮らすのは難しい。ただし、いじめや詐欺などネットに関わる被害は後を絶たない。座間事件の被害者には高校生3人が含まれていた。成長過程で判断力が十分備わっていない子どもや若者をネット関連被害からいかに守るかが大きな課題となっている。

 男は、短文投稿サイトのツイッターなどに自殺願望をほのめかす投稿をしていた女性を検索などで探し「一緒に死のう」などと返信。その後、個別に接触できる無料通信アプリのLINE(ライン)などに切り替えてやりとりを重ね、誘い出したとみられる。ツイッターの書き込みなら多くの人が閲覧できるが、ラインなどは当事者同士など限られた人しか見られず、やりとりは表面化しにくい。

 県教育委員会は業者に委託してネットパトロールを行っている。児童や生徒、学校などに関わる不適切な書き込みが見つかれば、サイト運営者に削除を依頼したり、学校に連絡して生徒指導につなげたりしている。生涯学習課によると本年度に入り、自殺をほのめかすような生徒の書き込みを発見。それほど深刻な内容には見えなかったが、学校に連絡し、本人と話し合った上で削除させたという。

 自分の名前や学校名を不用意に書き込んだり、友人の写真を勝手に投稿したりするケースが散見されるという。深刻なトラブルにはつながっていないものの、安易に名前をさらすことに大きな危険が潜んでいる。

 ネットトラブルの抑止などに取り組むセーファーインターネット協会(東京)主席研究員の高橋大洋さん(50)は「今回の事件でツイッターが危ない、ラインが危ないといった反応が出ているが、それでは本当の危険性は子どもたちに伝わらない」と話す。ネットというと大人は危険なサイトの閲覧など見ることに伴う被害を想定しがちだが、「発信する行為に高いリスクがある」と指摘する。

 自分の情報を発信して誰かとつながり、一対一のやりとりに移った場合、子どもの判断力ではつけ込まれたりする恐れが高い。高橋さんは「本人に対する教育はもちろんだが、周囲の大人がそうした危険性をどれだけ認識し本人をバックアップしてあげられるかが大切」と言う。

 ネットのない社会はもはや想像しにくい。ならばどう付き合っていけばいいのかを親子や家族で話し合う必要がある。学校の役割はもちろん大事だが、家庭でも子どもの様子を見守り、積極的に関わることが被害防止の大きな力になる。