北斗星(11月11日付)

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 福島で1人で暮らす70代の男性が「冬は楽だぜ」と作家の落合恵子さんに語ったそうだ。「余った野菜を鍋に突っ込んで、魚か肉でも入れて食べ、明日もそれを食べればいいんだから」と

▼東京電力福島第1原発事故で、男性の息子や孫は県外で避難生活を続けている。悲しみの中で妻は病気に倒れて入院し、男性は自宅に1人になってしまった。楽だぜと言ってはみたものの、「鍋っていうのは湯気の向こうに笑顔がないとうまくないんだよ」と涙ぐんだという

▼落合さんは先月末、横手市で開かれた故むのたけじさん(美郷町出身)の映画の上映会に駆け付けた。トークショーでこんな話を披露し、「これが日本の今の姿。(原発がある限り)あなたにも私にも起き得ること」と続けた

▼落合さんが気になるのは「市民にとっての平和」だ。戦争がないというのは大前提で、その上に貧困や差別、暴力などがない社会を築く必要があるという

▼だから9条に代表される日本国憲法の平和主義を大切に思う。改憲に積極的な安倍晋三首相が引き続き政権を担うことがとても気掛かりだ。「むのさんだったら、こんな状況でどんなメッセージを発しただろうかと考えたりする」と話した

▼戦争の愚かさ、平和の尊さを訴えたむのさんの存在感は大きかった。そんな役割は担えないとしても、平和を実現するには一人一人の行動が大切だ。「自分に何ができるのかと問い続けていくしかない」。落合さんからのメッセージだ。