北斗星(11月15日付)

お気に入りに登録

 昭和の大横綱大鵬の納谷幸喜さん(故人)は、恵まれた体格に甘えることなく、人一倍稽古を積んだ。「力士は稽古、稽古、また稽古なんだよ」と訴え「体得」という言葉を好んだ

▼相撲界には「かわいがり」と呼ばれる稽古がある。土俵に何度も転がされ、それでも立ち上がることを求められるぶつかり稽古。ふらふらになってぶつかって、また転がされる。言葉とは裏腹の厳しさで、その中から体得するものがあるのだろう

▼だが2007年には、かわいがりの名を借りた暴行死事件が起きた。入門間もない17歳の力士を、当時の親方がビール瓶で殴り、翌日は稽古と称して兄弟子が土俵にたたきつけて金属バットで殴るなどし、多発外傷性ショックで死亡させた

▼事件を受けて日本相撲協会は暴力根絶を誓った。竹刀など暴行につながりかねない道具を稽古場から撤去するほか、抜き打ちを含め部屋の視察を行うことなどを決めた。どんな理由の下にも暴力は許されない

▼横綱日馬富士が先月下旬、会食の席で同じモンゴル出身の平幕力士をビール瓶で殴り、頭にけがをさせていたことが分かった。力士は入院し、警察に被害届が出されている。日馬富士は九州場所の休場を届け出た

▼暴行死事件の後も八百長問題など不祥事続きで、大相撲人気は急落した。角界挙げての取り組みで人気は回復し、今年は全90日間の満員御礼が確実になっていた。その盛り上がりに横綱が水を差すとは。何を体得してきたのだろう。