社説:知的財産の活用 企業価値高める努力を

お気に入りに登録

 情報通信や経済のグローバル化の進展に伴い、特許や商標など知的財産の活用戦略が重要性を増している。各企業が知的財産に対する意識を高め、個々の技術やサービスを生かすことは、日本の産業全体の競争力を底上げすることにつながるだけに、取り組みの活発化に期待したい。

 国は知的財産の創造、保護、活用、人材育成を柱とする知的財産戦略大綱を2002年にまとめ、03年には知的財産基本法が施行された。安倍政権は地方創生の観点から、知的財産の活用を成長戦略の柱の一つに位置付けている。

 企業活動によって生み出されるさまざまな知的財産権のうち特許権、実用新案権、意匠権、商標権の四つを所管する特許庁によると、16年の特許出願数は31万8381件と、この10年間で2割減る一方、特許の新規登録数は17万件前後で横ばい。出願に対する登録の割合は増加傾向にあることから、企業が特許出願を厳選し、量から質への転換が進んでいることがうかがえるという。

 国は知的財産基本法に基づき、知的財産活動の活発化につながる指針を都道府県ごとに定めるよう求めている。だが、これまで策定したのは全国で12県にとどまる。本県は15年に指針を策定したものの、目に見える成果は上がっておらず、16年の本県の特許出願数は132件で東北最下位、全国で43位と低迷している。この傾向は近年変わらず、本県の産業構造が依然として下請け体質であることを物語っている。

 このため県地域産業振興課は「特許は新商品開発の前提となる技術。付加価値を高める製品作りにつなげてほしい」と呼び掛けており、大学や関係機関など産学官で連携しながら企業の知的財産活用への取り組みを促す考えだ。

 企業には長年培った技術やサービスがあるはずだが、多くがその価値に気付いていない可能性がある。知的財産を特別なものと捉えず、活用することで基盤強化に努め、企業価値を高めてほしい。

 知的財産を活用することは、自らの強みを生かして売り上げ増に結び付けるだけでなく、それぞれの企業が抱える課題と向き合う大切な機会にもなる。

 人材育成も重要だ。独立行政法人の工業所有権情報・研修館(INPIT、東京)は、知的財産に関する知識を若いうちに身に付けてもらおうと、そうした学習活動に取り組む高校や高等専門学校を支援している。

 商品開発やデザインの見方、発想法、観察力、商品の権利化などについて3年間かけて学習する内容で、本県では男鹿海洋高校が12年から取り組んでいる。ものづくりや起業に向けた意識を高校生の段階から醸成することは、将来の地域経済活性化にもつながるだろう。他校も参考にしてほしい。