北斗星(12月8日付)

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 少女漫画誌を出版する白泉社の元社長麻木正美さん(85)=都内住=は集英社の雑誌編集者として鳴らした。1960年代に漫画家の故赤塚不二夫さんのヒット作「ひみつのアッコちゃん」を担当。71年にファッション誌「ノンノ」が創刊された際は副編集長として同誌を軌道に乗せた

▼今は首都圏のマスコミ人OBらでつくる「酒のペンクラブ」の月報に、酒にまつわる巻頭言を2号に1度書いている。両親と妻は本県出身。秋田の地酒も多く紹介した

▼「酒には種類を問わず、人をつなぐ働きがある」と言う麻木さんだが、焼酎は好きになれないという。13歳だった45年8月15日の「終戦の日」に無理やり飲まされたのが最初だからだ

▼そのときは父の故郷・秋田市土崎港に東京から疎開中。14日夜からの土崎空襲で足を負傷していた。手術のため運ばれた病院に麻酔薬は既になく、代わりに飲まされたのが焼酎。手術の痛みに、むせる苦しさが加わっただけだった

▼麻木さんは約10万人が死んだ東京大空襲も経験した。同年3月9日夜に疎開先の静岡県から帰京して数時間後のこと。その際は難を逃れたが、翌月の空襲で生家が全焼した。「焼夷(しょうい)弾が燃え広がった東京の空襲も土崎空襲の爆弾の衝撃も怖かった」。空襲後の悲惨な光景は今も忘れない

▼76年前のきょう8日、太平洋戦争が始まった。「戦争は人のつながりを断つ行為。二度と起きてほしくない」。編集者として多くの人に出会った麻木さんはそう思う。