社説:混迷する国際情勢 「北」への対応問われる

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 北朝鮮問題が緊迫化した情勢のまま年を越した。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は1日の「新年の辞」で、米国本土全域が核攻撃の圏内にあるとの認識を表明し「核のボタンが私の事務室の机上に常に置かれている」と主張し、トランプ米政権をけん制した。軍事力を誇示する狙いだろうが、平和的な解決を望んでいる国際社会を新年早々から失望させた。

 今年も日本政府にとって最大の外交問題が北朝鮮への対応となることは間違いない。北朝鮮が9月9日の建国70周年までに、核搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実戦配備を宣言するとの見方もある。今後、北朝鮮の脅威がさらに増す可能性は高いだろう。

 日本が米国と共に主導してきた経済制裁は、北朝鮮に大きなダメージを与えているとみられるが、果たして最大の目的である北朝鮮に核開発や核兵器を放棄させる動きにつながっているのか。その点を日本政府は検証する必要がある。

 また、安倍晋三首相が言う「最大限の圧力」が、日本国民が待ち望む拉致問題解決の糸口となるのかも甚だ疑問だ。一日も早い解決に向け、外交戦略を見直すことも視野に柔軟な対応が求められる。

 昨年は、国際秩序のたがが外れたかのように世界が混迷の度合いを深めた。北朝鮮が核開発・ミサイル発射をエスカレートさせたほか、世界でテロ事件が相次ぎ、ポピュリズム(大衆迎合政治)勢力が台頭した。さらに米国をはじめ、中国、欧州などで自国優先主義が顕在化した。こうした動きが今年一層加速し、日本の外交にも暗い影を落とすことが危惧される。

 そうした中、「米国第一主義」を掲げる米政権とどう向き合うかが、今まで以上に重要だ。米国が主導していた環太平洋連携協定(TPP)や地球温暖化防止の国際的な枠組みである「パリ協定」から離脱を表明したほか、エルサレムをイスラエルの首都に認定するなど、トランプ氏の独断的言動は目に余る。

 世界はパックスアメリカーナ(米国主導の平和主義)の下で発展してきた。しかし今、その秩序は崩れつつあり、中国の台頭などにより米国の国際的な影響力は低下している。米国の世論調査でも、48%がトランプ政権下で国際社会での米国の指導力が低下したと回答している。同盟国である日本には、誤った方向に進もうとしている時はしっかりと米政権に苦言や提言をする役割を担ってもらいたい。世界秩序の安定に米国が積極的に関与するよう働き掛ける必要もあるのではないか。

 南シナ海や東シナ海への海洋進出を強める中国や従軍慰安婦問題を巡り日韓合意が揺らいでいる韓国との関係改善も急務だ。諸問題の解決に向け、外交政策をどう進めるか。課題は山積しており、安倍政権の真価が問われる。