社説:秋田学習旅行40年 農村と都市の懸け橋に

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 東京都町田市の私立和光中学校の生徒が仙北市などの農家で農業を中心に体験学習する「秋田学習旅行」が40周年を迎えた。生徒は農業体験を通じて成長し、受け入れ農家もその姿に元気をもらっている。農村と都市の息の長い交流につながっており、意義は大きい。

 同校は農業の持つ教育的効果に着目し、1977年にこの学習旅行を始めた。仙北市の「わらび座」が当時、修学旅行生に踊りや農作業を体験してもらう取り組みをすでに行っており、仙北市や大仙市、美郷町などの農家が同校生徒の農業体験を受け入れた。ここ数年は収穫期の9月下旬に2年生140~150人が訪れ、農家二十数軒に分かれてそれぞれ3日間にわたり稲刈りなどを体験している。

 参加した生徒は計約6500人に上る。受け入れているのは家族経営の小規模農家が多い。地方で体験学習する教育旅行の先駆的な取り組みで、これほどの人数をこれだけ長く受け入れている例は少ないという。

 昨年11月に仙北市で行われた40年記念イベントでは秋田学習旅行に参加した卒業生らが「土の感触や農作物の重みを体感し(食卓で)生産現場を想像できるようになった」「卒業後も訪れられる古里を得た」と感想を述べた。受け入れ農家も、最終日に子どもたちが見せる涙に感激し農業を続ける自信に結び付いていることなどを語った。

 秋田学習旅行は本県が記録的大雨に見舞われた昨年も行われた。同校と生徒の保護者は被災した大仙市の受け入れ農家に見舞金を贈って支援。被災農家も復旧が途上にある中、いつも通り農業体験を受け入れた。

 同校が2008年から、農業体験受け入れ農家のコメを購入する運動を行っていることも注目される。米価下落に苦しむ農家のためになればと校長自らが保護者、同窓生ら約1万人に購入を勧めるチラシを送り、始めた取り組みだ。保護者らが都内で試食会を開き、秋田米をアピールしたこともある。

 こうした活動を行っていることについて同校は「日本の農業が廃れれば農山村の原風景が失われる。買い支えることは農業への応援になると考えた。生徒たちを、そうした問題も考えられる賢い消費者に育てる目的もある」と説明する。

 卒業生の中には農業専門紙の記者になった人がいれば農業関係の仕事に従事した人もいる。秋田学習旅行は農業体験にとどまらず、農業を取り巻く厳しい現状や課題を生徒や保護者が学ぶ機会にもなっているようだ。

 都市の住民が食料生産地の実情を理解し、消費という形で下支えすることは地方と都市の望ましい関係といえる。今後農業の大規模化や法人化が一層進み、小規模農家が減少することも予想されるが、こうした農家と生徒の触れ合いは大切にしたい。農村と都市の懸け橋として一層の交流促進を望む。

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