北斗星(1月13日付)

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 女性にとって憧れの振り袖。初めて袖を通すのは成人式という人が圧倒的に多いらしい。親もわが子の晴れ着姿に成長を実感し、家族が喜びを共にする日でもある。ところが、その成人式で前代未聞の騒動が起きた

▼横浜市の振り袖販売・レンタル業者が突然営業を停止し、成人式に晴れ着を着られない新成人が続出した。一生に一度の晴れやかな日は台無しになり、大人への第一歩は悲しいものとなってしまった。ショックで式に参加できない女性も多かったという。どれほどつらかったことか

▼しかし、世の中捨てたものではない。ヘアメークや着付けのスタッフに動員をかけ、代役を買って出た同業者がいた。インターネットで着付けを受け付け、救済の手を差し伸べた呉服店もあった

▼問題の業者の店舗があった八王子市では、市職員が人づてにボランティアを探し、成人式会場で数人に着付けをしてあげたという。落胆する人たちの傍らに、心温まる光景も広がっていた

▼代役を買って出た同業社社長が、「つらい経験を糧に大人としての一歩を踏み出してほしい」と語っていたのが印象的だった。災い転じて福となすの心境で頑張ってほしいというエールだ

▼複雑化する現代社会では、この先もどんな事件が起きるか分からない。新成人を今後も荒波が待ち受けているだろう。だが、困った時に手を差し伸べる人たちがいることを忘れてほしくない。そんな思いを胸に刻み、荒波に立ち向かっていってほしい。