社説:特殊詐欺被害 巧妙化する手口に注意

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 県内で特殊詐欺による被害が後を絶たない。昨年1年間に県警が認知した被害額は8349万円だった。前年の8836万円からわずかに減った一方で、件数は36件から50件に増えた。

 認知被害額の微減と件数の増加は全国的な傾向であり、浮かび上がるのは被害の多発と小口化だ。手口の多様化や巧妙化は一段と進んでおり、依然、深刻な状況が続いている。

 県警によると、インターネットの利用料名目で現金をだまし取る「架空請求詐欺」被害の認知件数は、前年比14件増の33件(被害額5583万円)に上り、全体の66%を占めた。中でも目立つのは、電子マネー型と呼ばれる被害だ。

 電子マネーはコンビニなどでカードとして購入できる。「有料サイトの未納金がある」などとうそのメールを不特定多数に送り、連絡してきた人にカードを買わせ、電話やメールでカードに記載された番号を連絡するよう指示して金を詐取する―という流れだ。

 通信販売などの代金をコンビニで支払う「収納代行」を悪用した架空請求詐欺の増加と合わせ、県内でもコンビニを介した犯行が増えている。金融機関が水際対策を強化したため、犯行形態がシフトしているとみられる。

 ただ、少ない店員で切り盛りするコンビニ側の対応にはおのずと限界がある。県内のあるコンビニ店員は「来店者が集中した時などはレジ対応で精いっぱい。詐欺を警戒するのは難しい。収納代行の仕組みや電子マネーの購入方法を厳格にするなど、制度の見直しを図ってほしい」と訴える。コンビニを使った犯行の抑止が大きな課題だ。

 昨年1月に内閣府が行った特殊詐欺についての世論調査では「自分は被害に遭わない」と回答した人が8割を超えた。70歳以上でも2人に1人が「だまされない自信がある」と答えている。

 これに対し県内の昨年の被害は、65歳以上が24件で全体のほぼ半数を占めた。危機意識の不足が防犯対策を手薄にしている面はないか、一人一人が自分に問い直してみてほしい。

 全国的には子や孫をかたって電話する「おれおれ詐欺」が増加に転じていることや、被害が若者や中年層に広がってきたことなどが指摘されている。大切な財産を守るため、日頃から詐欺の手口や傾向を押さえるなど、防犯意識を高めることが大切だ。警察や行政が最新の手口を周知することが効果的だろう。

 特殊詐欺は子を思う親心を踏みにじったり、でっち上げのメールを送り付けて不安をあおったりする卑劣極まりない行為である。被害の未然防止には一人一人の意識の持ちようとともに、普段から相談や声掛けのできる人間関係を地域に築いておくことが大事だ。特殊詐欺を許さないという機運を社会全体で醸成し、抑止につなげたい。