小松菜奈、辛口原作ファンをも納得させる“二次元ヒロイン力”

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辛口ファンの多い『ジョジョ』の映画作品においても高評価を獲得していた小松菜奈 写真/鈴木一なり (C)oricon ME inc.

 モデルで女優の小松菜奈が、漫画原作の映画『坂道のアポロン』(3月10日公開)でヒロインを演じる。続けて5月にも主演作品『恋は雨上がりのように』の公開が控えており、過去の出演作でも漫画原作映画が多くを占める。なぜ小松菜奈がこうも漫画原作の映画のヒロインに起用されるのか。実写映画化の流れが続く今において存在感を発揮しつつある、小松菜奈による他を圧倒する “二次元ヒロイン力”の秘密を紐解いていく。

【画像】原作ファンも可愛いと高評価、小松菜奈の女子高生姿

■漫画原作映画のヒロイン役に抜てきが続く、異色の経歴

 今月5日、映画『坂道のアポロン』(3月10日公開)のマスコミ完成披露試写会が行われ、ヒロイン・律子を演じる小松菜奈、主人公・薫を演じる知念侑李、クラスメイト・千太郎を演じる中川大志らが登壇した。本作は小玉ユキによる同名タイトルのコミックの実写映画化となる。2012年に『月刊flowers』(小学館)で連載終了、同年にはアニメ化もされた人気作品が約6年の時を経て映画化される。同作は少女漫画ながら、60年代の佐世保を舞台に“高校生とジャズ”、そして“友情”をテーマにした独特の世界観から根強いファンを持つタイトルだ。

 さらには、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載中の人気コミック『恋は雨上がりのように』の映画化作品(5月25日公開)でも主人公に抜てき。バイト先の冴えない店長(大泉洋)に28歳差の恋心を抱く女子高生・あきら役を演じることも先ごろ報道された。同作は『2016年マンガ大賞』の候補にもなった人気タイトルで早くも注目を集めている。小松の過去の出演作品を見てみると、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017年)で山岸由花子役を好演。他にも『近キョリ恋愛』(2014年)、『バクマン。』(2015年)、『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016年)、『溺れるナイフ』(2016年)、『ヒーローマニア-生活-』(2016年)など、コミック原作の実写映画でのヒロイン役が相次いでいることが分かる。

 小松菜奈の女優業の特筆すべき点は、ヒロイン役に抜てきされるだけでなく、“何かにつけて批判の多い”漫画原作の実写化作品において小松個人としては高評価を得ていることにある。小松菜奈はなぜ“辛口の原作ファン”を納得させる存在感を発揮できるのだろうか。


■塩化ビニール製のような“人形感”あるミステリアスな美貌ゆえに、原作ファンからも高評価

 『ジョジョ~』では山岸由花子役で出演したことに触れたが、ジョジョといえば、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)でも「ジョジョ芸人」が放送されたり、世代を超えて“熱烈”なファンが多いことで有名な作品。小松が演じた山岸由花子は、想いを寄せる広瀬康一(神木隆之介)を監禁し、思い通りにならないとブチ切れる“ぶっ飛んだ”キャラクター。ファンの間では小松菜奈がどうブチ切れるのかも話題になっていたが、劇中ではバトルシーンはなく、原作の由花子らしさを十分に発揮するシーンが豊富とは言えなかった。まさしく原作ファンからの批判の対象になりそうなものだが、持ち前のミステリアスな空気感を存分に発揮し、狂気をはらんだ“視線”の演技で、次回作で何かが起こりそうな期待へとつなげた形だ。そして、SNSで「由花子と康一(神木隆之介)の絡みが素晴らしい」「小松菜奈の狂気感が最高!」「妖艶でハマり役だった」など高評価を獲得した。

 一方、『バクマン。』では対照的に原作のキャラに忠実な透明感を発揮していた。小松が演じたのは主人公・最高(佐藤健)が想いを寄せる声優志望のクラスメイト・亜豆美保。「(亜豆は)自分の意思をしっかり持っているピュアな女の子で、男性がイメージする理想の女性のように思います」と本人が語るように、劇中ではまさに正統派とも言える“王道の美少女”を熱演。SNSにおいても「ひたすらに小松菜奈が可愛い映画だった」「美少女過ぎる亜豆だけで観る価値ある」「『渇き。』から『バクマン。』観ると小松菜奈に恐怖すら感じる(笑)」といったコメントも見受けられた。

 小松が演じた役柄は、王道の美少女ヒロインからエキセントリックな役まで多岐にわたるが、このように役のイメージを超越したビジュアルが原作ファンから称賛されてきた。小松菜奈の突き抜けた白い肌、モデルとしても活躍する長い手足、顔の小ささ…作り物のような印象さえも受けるいい意味での“人間味の無さ”が、原作のイメージを壊すことなく実写映画にハマっているといえる。最新作となる『坂道のアポロン』でも、同様に原作のイメージとは異なる魅力を発揮。“原作”のヒロイン像は、飾り気のないヘアスタイルにそばかすがチャームポイントの純朴な女子高生。ある意味イモっぽさが魅力のキャラクターだが、今回小松が演じると学園のアイドルといった風に仕上がっているのである。


■デビュー作で徹底的に鍛え上げられた演技力がベースにあってこそ

 しかし、小松の評価の理由はその美貌だけではなく、女優としての演技力も忘れてはならない。スクリーンデビュー作にして出世作の『渇き。』(2014年)で培った女優としての基礎があってこその評価といえる。小松は、スパルタ指導で知られる中島哲也監督から「へたくそ!」と厳しい言葉で指導されつつも、男を翻弄する倫理観の壊れた女子高生・加奈子を演じあげた。映画初出演ながら役所広司、國村隼ら6人とのキスシーンにも体当たりで挑戦し、その結果、第38回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞するに至った。小松自身も壇上から「最初の現場が中島監督の『渇き。』だったおかげでもありますし、それがベースにあると思います」と明かしている。また、「『渇き。』で演じた加奈子の印象が強くて、その後どんな役をやっても『裏があるんじゃないか』と言われることが本当に多く、どうしたらそのイメージから抜け出すことができるか悩んだ」と本人も語るほど、インパクトを与えた役でもあった。

 過去の漫画原作映画の芝居においても、『黒崎くんの言いなりになんてならない』では中島健人と千葉雄大、『溺れるナイフ』では菅田将暉と重岡大毅の間で揺れ動く乙女心を見事に表現した。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』では、とある事情により恋人と同じ時間軸に存在できない悲しみを、デートシーンの度に涙を流す“泣き”の演技で魅了。「現実的にはありえないところで泣くシーンが多くて大変でした。でも、目薬には絶対に頼りたくなかった」と語り、女優魂を見せつけた。漫画原作ものの出演では、ビジュアルに注目されがちだが、小松は女性の“二面性”や物語と共に“変化”していく姿をしっかりと演じられる女優でもあるのだ。

 他にも『スリル!~赤の章~警視庁庶務係ヒトミの事件簿』(NHK総合)でのドラマ初主演、『連続ドラマW 夢を与える』(WOWOW)や、世界的ヒットを連発する米人気DJ/プロデューサーデュオ「ザ・チェインスモーカーズ」のMV出演など、多ジャンルの作品出演を経て女優としての実力も上げている。演技力が評価されたという点では、マーティン・スコセッシ監督のハリウッド映画『沈黙 -サイレンス-』の出演実績があることからも明らかだ。


■底知れぬ女優魂に映画監督からも一目おかれる存在に

 小松菜奈は、まるで塩化ビニール製のマネキンのような“人形感”のあるミステリアスな美貌と、女優の基礎となる確かな演技力が合わさった“二次元ヒロイン力”で、原作ファンの強烈な固定イメージを超越して存在感を発揮しているといえる。事実、その唯一無二の個性は、映画監督はじめ映像クリエイターから一目置かれているようだ。

 『坂道のアポロン』の三木監督は女優としての小松菜奈について、次のようにコメントをくれた。「『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』でご一緒して、感情の揺れを演技として技術的にこなすんじゃなくて、自分の中から湧き上がるものをすごく大事にしている女優さんだなと感じました。実はクランクイン前にマネージャーさんから、役についてすごく悩んでいるとこっそりと聞いていたんです。でも現場では悩みを微塵も感じさせず、心を削って命を吹き込んでくれた」と小松の女優魂への賛辞を送っている。三木監督は当初小松について「一番不安なキャラクターだった」と話していたが、こうして2度目となるタッグも実現したというわけだ。また『渇き。』の中島監督においても、「新人女優・小松菜奈さんとの劇的な出会いが、僕にこの物語の映画化を決意させました」と発言した逸話が知られている。

 この先も続くであろう、コミック原作の実写映画化の流れにおいて、小松菜奈の“二次元ヒロイン力”は引き続き存在感を発揮するであろう。彼女が映画界の宝になる日がくるのもそう遠くはないはずだ。

(文/kanako kondo)

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