社説:憲法改正論議 必要性を合理的に示せ

お気に入りに登録

 憲法改正を巡り、参院憲法審査会が今国会での議論をスタートさせた。自民党が改憲を目指すのは、自衛隊の存在の明記を想定する9条や大規模災害に備える緊急事態条項の新設など4項目。9条改正などについては野党の異論が強く、議論を通して改憲の是非を見極めたい。

 憲法審査会で、自民党は参院選の「合区」解消のため47条などを改正し各都道府県から少なくとも1人を選出できるようにする条文案を示した。これに対しては与党の公明党が1票の格差との関係で反対したほか、野党からは選挙制度改革で対応すべきだとの意見が相次いだ。

 自民党憲法改正推進本部は、教育の充実に関する改憲条文案も大筋で了承した。教育を受ける権利などを定めた26条に3項を新設し、国に教育環境を整備する努力義務を課すのが柱。だが高等教育までの全課程無償には毎年4兆円を超える予算が新たに必要となるため財源難を理由に教育の無償化の明記は見送った。この条文案に対しても野党側が反対姿勢を鮮明にした。

 条文案には、教育の無償化を主張する日本維新の会の条文案「経済的理由によって教育を受ける機会を奪われない」の一部が盛り込まれた。経済的理由の明記は「無償化と異なり強制力のないリップサービス部分だから、入れ込めばいい」と本部役員会で出席者から提案があり、改憲の理由付けにもなると急きょ加えたものだ。維新を取り込む狙いがある。

 だが、経済的な理由による差別禁止は既に教育基本法に定められているとの指摘があり、自民党の改憲ありきの姿勢が透けて見える。野党側から「改憲しなくても対応できる」との疑問の声が上がるのは当然だろう。

 教育の充実や「合区」解消に関し、なぜ立法措置や制度改革などで対応しないのか。自民党には、まず改憲の必要性を合理的に示すことが求められる。

 それは、自民党が今後意見集約する9条改正や緊急事態条項に関しても同じだ。共同通信社が先ごろ実施した世論調査では9条に関し、「戦力不保持と交戦権否認を定めた2項を維持し自衛隊の存在を明記すべき」38・3%、「2項を削除した上で自衛隊の目的・性格を明確化すべき」26・0%、「自衛隊明記の改憲は必要ない」24・9%と意見が分かれた。一方、安倍晋三首相(自民党総裁)の下での改憲は49・9%が反対し、賛成38・5%を上回った。国民の多くが改憲について迷っていることが見て取れ、丁寧な議論を望んでいるのは明らかだ。

 自民党は来月25日の党大会までに9条2項を維持して自衛隊の存在を明記する安倍首相案での意見集約を図る方針だが、党内にも異論が多い。9条改正については政党間で主張に大きな隔たりがある。自民党は野党側の主張にも耳を傾けつつ、改憲が本当に必要なのか、議論を尽くす必要がある。