社説:カジノ実施法案 本当に整備必要なのか

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 政府は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案の今月中の国会提出を目指し、策定作業を進めている。カジノ整備は本当に必要なのか―。国会での論戦を通じ、これまで十分に議論されたとは言い難い必要性について見極める機会としたい。

 政府は2030年に訪日外国人旅行客を6千万人、旅行消費額を15兆円にする目標に掲げており、そのけん引役として期待しているのがカジノだ。整備により「地域経済の振興」を図ることを重点目標の一つに掲げている。

 だが、カジノ整備に関して議論は深まっていない。実施法案の前提として、16年にはIRの基本理念を定めた整備推進法案の国会審議が行われたが、与党の数の力を背景に、審議時間は衆参通じてわずか22時間という中で採決された。必要最低限の議論さえ行われなかったのが実態だった。

 IR整備推進法成立直後の共同通信社の世論調査では、カジノ解禁について反対が69・6%に上り、賛成の24・6%を大きく上回っている。国民の不安はそれだけ根強いといえる。

 政府が進めている実施法案の策定作業では現在、入場料徴収の有無や入場回数の規制など細部を詰めているほか、最大の焦点である整備箇所数の検討に入っている。整備箇所数は全国で「2~3カ所」が有力視されてきたが、全国の自治体の誘致活動が活発化する中、自民党内では、さらに増やす拡大論まで急浮上している。これに対し、公明党では慎重な意見が相次いでおり、与党内の調整は難航しそうだ。

 ギャンブル依存症対策の一環と位置付けるIR実施法案の入場回数制限にしても、政府案は日本人客の入場回数を「上限週3回」としており、依存症の抑止効果があるとは言い難い。しかも専門家からは、入場回数を規制しても利用金額や滞在時間を制限しなければ対策は不十分だとの指摘がある。これまで政府が示してきた依存症の抑止対策では明らかに足りない。

 このままでは国民の不安は増すばかりだ。これまでの審議が不十分なことや、国民の不安が解消されていないことを踏まえ、与党は実施法案策定についても慎重に進めるべきだ。

 国内では、パチンコ・パチスロや競馬、競輪、オートレースなどの公営ギャンブルが原因の依存症が社会問題化しており、厚生労働省の14年度調査では、依存症の疑いのある人の全国推計数は500万人を超えていた。カジノが解禁されれば依存症の人がさらに増えることが懸念される。

 カジノ整備について国民を挙げた議論が不可欠だ。政府には、カジノの必要性や依存症対策についてしっかりと国民に説明することが求められる。何より国民の声に真摯(しんし)に耳を傾けることが必要だ。