社説:モーグルW杯 地元選手育成の契機に

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 スポーツで世界最高レベルの技に触れる機会は貴重だ。仙北市のたざわ湖スキー場で2015年から毎年開かれているフリースタイルスキー・モーグルのワールドカップ(W杯)はその一つ。今月上旬に開かれた大会には2日間で県内外から延べ約1万人が訪れた。

 観客数は昨年の大会を約2千人上回り過去最多だった。平昌(ピョンチャン)冬季五輪直後の開催とあって、五輪の優勝者や日本人メダリストも出場した大会は大いに盛り上がった。同スキー場の魅力はもちろん、選手や観客が宿泊した温泉など、地元の観光資源を発信する機会にもなった。

 最大斜度33度の黒森山がモーグルに向いているとして県が改修に取り組み、全日本スキー連盟(SAJ)公認コースに認定されたのが12年。その2年後には国際スキー連盟(FIS)公認コースとなった。

 県内有数の難コースに新たな可能性を見いだし、わずか7年のうちにコースや審判棟を整備した県の取り組みは迅速だった。国内では後発だが、大規模な大会を受け入れられる態勢を築いた仙北市など地元の対応も素早く、FIS関係者は運営の質が高くなったと評価している。今後の継続開催を確かなものにするため、これまでの運営を検証し、選手と観客の利便性を含めさらに向上を図ってほしい。

 その上で、世界最高峰の大会が毎年開催されていることを、本県での競技の普及、選手の育成にどう生かすかを考えたい。

 今大会では男子の堀島行真選手(中京大)が2種目を制して観客を沸かせたが、観客からは「地元から選手が出場すれば一層盛り上がるのに」との声も聞かれた。レースを見て刺激を受け、自分もやってみたいと意欲を燃やした児童や生徒は少なくないだろう。

 県スキー連盟は1月、ジュニア層を対象にした1泊2日のモーグルの講習をたざわ湖スキー場で開催。元五輪女子日本代表が講師を務め、地元を中心に小学2年から中学1年まで16人が参加した。県と仙北市の委託事業で大手企業も協力したが、ジュニア層対象の講習はこれが初めてだった。こうした取り組みを重ね、定着させていくことが大切だ。

 県内スキー関係者の間では、ノルディックやアルペンなど伝統的種目を重視する考えが根強いが、モーグルをはじめとする新興種目の注目度は年々高まっている。W杯で刺激を受けた子どもたちが地元で十分に練習できるよう、県内ではまだ少ない指導者を確保するなど態勢を整えておきたい。

 スポーツ立県を宣言した県は「第3期県スポーツ推進計画」案(18~21年度)で、スポーツによる地域活性化と交流人口拡大を掲げる。W杯などの大規模な大会を観光や物産のPRに役立てるだけでなく、地元選手の育成にも力を入れることで本県のモーグル熱を一層高めたい。