北斗星(3月14日付)

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 東京の渋谷区と港区の境にある表参道交差点。周辺に有名ブランド店が軒を連ね、人気の原宿も近い。11日の晴れた日曜日、近くを通り掛かると歩道は案の定混んでいた

▼7年前の同日に東日本大震災が起きたのと同じ午後2時46分。東北各地で追悼式が開かれているであろう時間帯に、ここでも何か行われるのではと思い、立ち止まった

▼アルバイト募集サイトを宣伝するトラックが大音量で音楽を流して何台も通ったが、犠牲者の鎮魂を訴える街頭演説などで犠牲者を悼む人もいなかった。買い物客や国内外の観光客の姿が目立った

▼「東京の人たちは震災を忘れ、2020年東京五輪に浮かれている」。都内で9、10の両日開かれた上映会の後、福島県の農家はこう言った。別の農家は上映会と併催された公開座談会で「『3・11』が近づくと震災報道が増えるが、福島原発事故はずっと続いている」と訴えた

▼上映作品は原発事故で被曝(ひばく)した動植物を取り上げたドキュメンタリー「福島 生きものの記録」シリーズ全5作。男鹿市出身の岩崎雅典さん(77)が事故翌年の12年から製作してきた。岩崎さんは「観客が入るか不安」と話したが、両日とも140人以上訪れた。東京にも福島を気に掛ける人はいるのだ

▼座談会では研究者らが、除染されていない森林で動植物の成長に異常が見られることなどを報告した。原発事故はいつ収束するのか。もの言わぬ生き物が示す現実から目をそらしてはならないと思った。

映像プロダクション「群像舎」代表の岩崎雅典さんに半生を語ってもらいました