社説:米英仏、シリア攻撃 正当性あるのか疑問だ

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 トランプ米政権は英仏とともに14日、シリアへの軍事攻撃に踏み切った。アサド政権が今月7日に首都ダマスカス近郊の東グータ地区で化学兵器を使って多くの市民を殺傷したと断定し、その報復に出た。化学兵器関連施設計3カ所を限定的に攻撃した。米国の攻撃は昨年4月に次いで2度目だ。

 米政権は、軍事攻撃に合わせアサド政権が化学兵器を使用した証拠に関する文書を公表した。しかし、現地でのアサド政権軍ヘリコプターの目撃情報やメディア報道などを基に結論付けた内容で、「説得力のある証拠」は一切示されなかった。

 これでは国際社会の理解が得られないばかりか、米国に対する各国の不信感が募り、国際的な亀裂も一層深まる恐れがある。トランプ大統領は、早急に明確な証拠を示す必要がある。

 化学兵器の使用は許されない行為だが、それが軍事攻撃を正当化できる理由になるかは疑問である。一義的には対話による問題解決へ努力を尽くすことが求められるからだ。

 化学兵器使用の疑惑からまだ1週間しかたっておらず、化学兵器禁止機関(OPCW)が証拠収集のため現地調査に入る直前というタイミングだった。国連安全保障理事会でも、化学兵器使用の責任者を突き止める調査に向けて話し合いが進められていた。調査機関設置案に関して常任理事国のロシアが拒否権を発動したとはいえ、調査の必要性については認めていたはずだった。

 しかも今回の軍事攻撃は安保理の武力行使容認決議を経ておらず、国連憲章に違反するとの声が上がっている。軍事攻撃に正当性はあるのか、しっかりと検証しなければならない。

 今回の軍事攻撃の背景として考えられるのが欧米と、アサド政権の後ろ盾ロシアの対立だ。今年3月に英国で起きた元ロシア情報機関員襲撃事件ではロシアが神経剤を使用した疑いが強まっており、欧州諸国からの批判が高まっている。軍事攻撃という強い姿勢を示すことにより、シリアだけでなく、ロシアや北朝鮮などの化学兵器使用を阻止する狙いがあるとみられる。

 一方で、トランプ氏は内戦の解決には目を向けず、ただ化学兵器のみを問題視する姿勢だ。11月に米中間選挙が迫る中、有言実行の強い指導者像をアピールしたい思惑が透けて見える。今後、シリア情勢がさらに悪化することも懸念される。

 求められているのはシリアの恒久的な平和の実現であり、米ロが先鋭化するのではなく、対話の道を探ることが不可欠だ。安倍晋三首相は軍事攻撃を支持すると表明したが、シリアの和平に向けてもやれることはあるはずだ。トランプ氏だけでなく、ロシアのプーチン大統領とも親密な関係を築いている。世界を戦火にまみれさせないよう両氏に積極的に働き掛けてもらいたい。