北斗星(5月16日付)

お気に入りに登録

 宮城県石巻市の門脇・南浜地区は太平洋に面し、かつて1800世帯、5千人が暮らす住宅地だった。ところが2011年の東日本大震災による津波で大半の家屋が流され、500人余りが犠牲となった

▼災害危険区域に指定され、人が居住できなくなった同地区を休日に訪れた。広大な敷地の一角には津波と同じ6・9メートルの高さにロープが張られ、たくさんのこいのぼりが風に泳いでいた。その下には「がんばろう!石巻」の看板。慰霊碑に手を合わせる人や震災伝承館「南浜つなぐ館」で語り部の話に耳を傾ける人もいた

▼語り部の一人である阿部信(まこと)さん(69)は、震災で36歳の長男を亡くした。だが落ち込んでばかりもいられないと気持ちを切り替え、津波の恐ろしさを語るようになった。「思い切って自分の体験を伝えたら、少し気が楽になった」という

▼国と宮城県、石巻市はここで「津波復興祈念公園」の整備を進めている。完成予定は20年度だ。園内にケヤキや桜などを植え、人々が集う場所にしようと取り組んでいるのがNPO法人「こころの森」

▼代表の古藤野(ことうの)靖さん(58)は「ここから未来に向けて復興のメッセージを発信したい」と話す。地元の里山で採取した種から育てた苗を中心に10年で20万本を植える計画だ

▼その植樹会に家族で参加。家の庭から持ち寄った桃の苗木25本を仲間入りさせてもらった。住民たちに交じって作業しながら、震災を決して風化させてはならないとの思いを新たにした。