社説:「関係人口」網構築 域外の人と知恵生かせ

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 鹿角市と横手市は本年度、それぞれ地域とつながりを持つ首都圏在住者らのネットワークづくりに本腰を入れる。両市は先月下旬、総務省が全国で実施する「関係人口」創出モデル事業の対象地域に選ばれた。事業を生かし、いかに地域活性化につなげられるかが問われる。

 関係人口とは、地元住民でも観光客でもない中間的な立場にある人たちの層を表現した造語だ。地元出身者やゆかりのある人、ふるさと納税の寄付者、伝統行事への参加者など地域に新たに関わろうとしている人たちを指す。事業は関係人口のネットワークを通じて外部のアイデアや行動力を取り込むのが狙いで、全国30地域で行われる。実施期間は1年間。事業費は総務省が全額負担する。

 両市は数年前から市外のファンを増やす独自の試みを推進してきた。だが、人口減対策や地域活性化の決定打はなかなか見つからない。モデル事業を最大限に活用して、意見を吸い上げる効率的な仕組みと地域の未来に有効な対策を見いだしてほしい。

 鹿角市は「鹿角家(け)」と名付けたネットワークを築く計画だ。首都圏などでの交流イベント「家族会議」や市内で生活する「実家暮らし」を数回体験してもらい、イベントなどに参加した人に「家族証」を発行し、地域と関わる機会を増やす。

 同市には2015年度から移住対策に力を入れた結果、3年間で64世帯が移り住んできたという実績がある。今回も移住推進を視野に入れるが、まずは地域と継続的につながる人のネットワークづくりを目指す。積極的な取り組みに期待したい。

 横手市は2年半前、「関係人口」とほぼ同じ意味合いの「応援市民」と題した制度を策定した。県外に住む出身者や、ふるさと納税者ら約7千人が登録している。

 応援市民には地元の物産情報、首都圏での市の活動、出身者の活躍を掲載した情報誌を送付しているほか、昨年は東京都内で出身者約90人が故郷の応援策で意見交換する場も持った。この集まりが盛況だったことから、モデル事業に選ばれた本年度は、応援市民が市の活性化策を企画して実現するためのセミナーを首都圏で開くなどし、多くのアイデアを得たい意向だ。

 課題は、築いたネットワークを通じ提案されたさまざまなアイデアを、地域活性化のためにどう具体化するかだ。意見をまとめたり、行動につなげたりするリーダー的な存在が必要になるだろう。

 今回のネットワークづくりを、返礼品競争が激化しているふるさと納税の在り方を見直すきっかけにもしたい。寄付と特産品の交換だけの関係にとどまらせず、継続的な協力関係に発展させることが望まれる。地域の将来を本気で考え、力を貸してくれるファンを増やしてもらいたい。