富士のある風景(5)海上の不二 永遠性の象徴、劇的に

お気に入りに登録
海上の不二(富嶽百景、18・2×25・2センチ)

 北斎は「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏(なみうら)」などに示されるように、波や水流、滝など水がさまざまに変化する様子を好んで描いた。流れる水は形を持たず、一瞬たりとも同じ姿を固定しない。そんな水を描ききることは絵師の画力を知らしめることにつながるのだろう。

 加えて、筆者は北斎にとって水は永遠性を象徴する重要なモチーフだったと考える。なぜなら最晩年の肉筆作品の一つである「富士越龍図(ふじこしのりゅうず)」(北斎館蔵)は、さらなる長寿を願った北斎が不死の竜に己を託して描いたのだと解釈できるからである。竜は水や海の神である。荒れ狂う大波の図は竜の化身を描いたものではなかったか。

(全文 572 文字 / 残り 284 文字)

北斎展は6月17日まで