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地域に届け「安心」の声 震災時にも威力発揮
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「おはようございます。朝の放送の時間です。お目覚めはいかがでしょうか」―。
午前6時50分、潟上市の飯田川地区。毎朝おなじみの定時放送が各家庭備え付けの有線放送のスピーカーから流れる。検診や始業式など地域の行事案内をはじめ、地元商店の売り出しや酒蔵開きなどのコマーシャルが続く。
定時放送は1回約10分。1日4回で、最終は午後6時45分からだ。
◆ ◆ ◆
県内で電話加入者が少なかった1950~60年代、農村部を中心に有線放送電話が導入された。主に加入者間の通話と放送の両機能を備えていたが、電話網の普及とともにほとんどの市町村で廃止。現在残っているのは、同地区と井川町だけだ。
同地区では「地域密着型メディア」として親しまれ、定時放送のほか、入学式や八郎湖フナ釣り大会など季節のイベントを録音中継し随時放送。列車の遅れや災害情報などを知らせるほか、加入者が急病になったときなど、ボタンを押して町内会に助けを求めることができる機能もある。

同地区の有線放送電話は旧飯田川町で69年、全世帯の約6割に当たる744世帯が加入しスタート。町内の電電公社(現NTT)の電話加入者数の4倍以上だった。公社の電話が普及した70年代以降も、便利さから高い加入率を維持。町直営を経て、現在は一般社団法人・市飯田川有線放送協会が運営する。放送局は、市飯田川庁舎に隣接する木造平屋だ。
常勤職員は2人。今年で3年目を迎える嶋田幸子さん(42)=飯田川下虻川=はアナウンスや番組編集、マイクを持っての取材を担当。「『聴いているよ』と言われると、うれしい。自分の声が流れるのは、恥ずかしいですが…」
山平鈴男さん(62)=飯田川飯塚=は総合管理者として40年以上、機器のメンテナンスを担当する。「ときには電柱に登り、断線がないかチェックすることもありますよ」
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昨年の東日本大震災では、県内で大規模停電が発生。電話も通じなくなるなど生活の基盤が大きく揺らいだ。しかし、同地区の有線設備は非常用電源で通常通り稼働。各家庭の有線用電話機やスピーカーに電気を送ることができ、通話可能な数少ない手段に。地震発生から数日間、有線の通話回数は普段の5倍近い1日約6千件に達した。
地震発生当時、山平さんと嶋田さんがいた場所は、放送局近くの認定こども園・若竹幼児教育センター内。翌日の卒園式の録音に備えて機材をセッティングしていたが、市役所などからの情報を伝えるため急いで放送局に戻った。「県内の火力発電所に被害はなく、点検のため停電しているとのことです」「火の元、交通事故にお気を付けください」―。余震が襲う中、2人は懐中電灯の明かりを頼りに放送を続けた。「パニックになりかけたが、頑張らなければと思った。有線をやっていてよかった」と山平さん。
今年1月末現在、1139世帯が加入。全世帯の75・1%に当たる。震災以降は、「災害に強い情報網が必要」と新たに契約する人もいるという。「どんなことがあっても、地域の人の声を伝えられるメディアであり続けたい」―。その思いを胸に、スタッフはいつものように放送機材に向かう。
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