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伝えたい、地域の財産 言葉を胸に環境保全
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「樹木は祖先より借りて子孫に返すものと知れ」
潟上市豊川の石川紀行さん(64)は、農業指導者・石川理紀之助(1845~1915年)の言葉を紹介しながら、こう続けた。「今生きる私たちが、山田地域の財産を子孫に伝えていかなければならないんです」
理紀之助は石川さんの高祖父(祖父母の祖父)。理紀之助と同じ、山林と水田が広がる山田地域に暮らす。水田10ヘクタールでコメを栽培するとともに、八郎湖保全活動に取り組むNPO法人の代表。地域の農家仲間とグループをつくり、自分が持つ水田の一角を開放、地元の児童に体験学習の場を提供している。
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理紀之助は旧山田村の石川家に婿入りし、貧しい村を立て直したほか、県内外で農業指導に励んだ。生前から、地元の八幡神社に祭られるほどの存在だった。
石川さんが生まれ育った自宅の敷地内には、理紀之助が生前に蓄えたコメを保存する「備荒倉(びこうそう)」やトタン張りの書庫などがあり、膨大な書物などが残る。「幼いころ、自分が理紀之助の子孫だという自覚は、ほとんどなかった。周りから特別扱いをされたわけでもない」と振り返る。
豊川小学校時代の恩師の一人が、教職の傍ら理紀之助を研究していた同市の故川上富三さん。4年生のころ、「この本を読んで勉強しなさい」と、理紀之助の伝記を書き写す課題を与えられた。1日1ページずつ取り組み、1年がかりで終えた。「私にだけ特別に宿題を課された感じ。ページを飛ばしたくて、しょうがなかった。あれで理紀之助の言葉を相当覚えたんでしょうね」
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秋田市立高(現秋田中央高)ではラグビーに打ち込み、日大進学を機に上京。大学紛争で授業が行われず、自動車板金店で修業したことも。この時に身に付けた技術で、車を修理するのが今も趣味だ。
卒業後、都内の食品メーカーや大手経済紙などで働いた。「20代は、やりたいことが見つからなかった。自分には何か違うものが向いているんじゃないか。そんな気持ちで働いていた」。古里に戻って農業を継ごうと決意したのは、30代前半だった。
以来30年以上、稲作のほか、葉タバコ栽培やコンビニ経営などのビジネスに取り組んだ。最近は地域の環境にも目を向ける。2007年に県の補助を受け、自宅から1キロほど離れた「草木谷(くさきだに)」の整備に取り組んだのがきっかけだ。
草木谷は杉林に囲まれた1ヘクタールほどの盆地で、理紀之助が独力で水田を開いた場所。後に、「寝ていて人を起こすことなかれ」と刻まれた石碑が一角に建てられたものの、長らく休耕田となっていた。
石川さんは同年、農家仲間と「草木谷を守る会」を結成し、もち米や酒造好適米を減農薬栽培。地元児童や県立大生らに田植えや稲刈りなどに加わってもらい、収穫祭での餅つきは恒例行事に。酒米で仕込んだ純米酒の売り上げは、会の運営費に充てている。
草木谷は地元に活気をもたらしつつあるものの、山田地域の行く末は心配だ。「約40年前は150人ほどいたが、今は60人ほど。どうすればいいのか。理紀之助の言葉や考えをもっと勉強していれば…と思うこともある。今は淡々とやるべきことをやるだけ」
水田を覆っていた雪は解け、農作業のシーズンはもうすぐ。石川さんは、県内外の農家を導いた理紀之助を思いながら、この春も水田に立つ。
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