[第8回]

涙が止まらない…1年半ぶりの聖地・県立

(2017年11月3日 掲載)
引退試合を終え、観客とハイタッチする高橋憲一さん

 Bリーグ2017―18シーズン開幕から1カ月が経ちました。ハピネッツは現時点でB2トップタイの11連勝。悲願のB1復帰に向けて優勝街道を突き進んでいます。アウェーの東京戦を除き、スポナビライブ越しに声援を送ってきた私も、10月28、29日の仙台89ERS戦でようやく今季初ホーム観戦が叶いました。

 今回の会場である県立体育館を最後に訪れたのは2016年5月のbjリーグプレーオフ戦。約1年半ぶりに足を踏み入れたことになりますが、入った瞬間、懐かしい記憶が次々に蘇りました。ブースターになりたての3年前、開幕戦見たさのあまり親にも知らせずに帰省しゴール裏に座っていたら、2階席の親に見つかり驚かれたこと。2年前にサッカーファンの義弟を連れて行ったら、応援幕とともに飾られていた「55」のユニフォームを見て、55番に何か不幸があったと勝手に勘違いしていたこと(ダイチは元気にシュート練習をしていました)。県立体育館は、多くのハピネッツブースターにとってそうであるように、家族との思い出が詰まったアリーナなのです。

筆者が1年半ぶりに訪れた県立体育館

 今回はB2に降格して初めてのホーム観戦であり、少なからず緊張と不安がありました。新しいBGMには馴染めるだろうか、新タオルダンスは覚えられるだろうか、そして雰囲気はどんな感じなのだろうか…。しかしその心配は杞憂に終わりました。28日はハロウィンナイトということで多少顔色の悪いお客さん(ゾンビの仮装?)はいましたが、表情の暗い観客は見当たらなかったのです。新しいBGMのチアパフォーマンスも大盛り上がりで、タオルダンスの新しい振り付けも、当初難しいと言われていたのにほとんどの人がマスターしており驚きました。B2に降格しても前向きな心を忘れず、みんなで目一杯ハピネッツを楽しもうとする姿勢、これはハピブーの最大の長所であり、誇れることではないでしょうか。

新たな道を歩み始めた高橋憲一さん

 そして翌日29日は今回のホーム観戦の最大の目的である、高橋憲一さんの引退試合がありました。雨が降りしきる中、県立体育館に駆けつけると開場時刻を過ぎたにもかかわらず長蛇の列が。皆この日を待ちわびていたのでしょう。憲一さん率いる「Ken’s team」には日本各地だけでなく中国やアメリカからも仲間が集い、MCは仙台の山蔭ヒーロさんという豪華な顔ぶれ。そしてチアパフォーマンスの合いの手はいつもの「ハピネッツ!」ではなく「ケンちゃん!」という声が自然にわき起こり、あらためて高橋憲一という選手がチームメイトにどれだけ慕われていたか、そしてブースターにどれだけ愛されていたかを実感しました。母校である東北学院大との試合は得意のスリーポイントも決まり、「Ken’s team」が勝利しました。そして試合後のセレモニーではいつものオープニングテーマが流れる中、スーツ姿の憲一さんがひとり登場。京都ハンナリーズの浜口炎HCなどゆかりの人びとが寄せたビデオメッセージが流れた後はいよいよ憲一さんの挨拶です。

今季は山形で指揮を執るジョセフ・クックさんからのビデオメッセージ

 思えばこの瞬間まで私は「憲ちゃんはひょっとして戻ってくるのではないか」とかすかな期待を抱いていたように思います。新シーズンの何試合かでスリーポイントが外れるたびに、「ああ憲ちゃんに打ってほしい」と何度思ったことか。しかし11年間の現役生活を終えた憲一さんは非常にスッキリとした表情で、現在のアンバサダーという仕事が充実していて楽しいこと、自分でも意外なほど未練を感じていないことを述べ、最後は感謝の言葉で締めくくりました。そう、憲一さんはすでに新しい道を歩み始めているのです。それも、しっかりとした足取りで。これを聞いて私もやっと心の整理がつくとともに、目からとめどなく涙があふれました。

スーツ姿で引退のあいさつをする高橋憲一さん

敬礼ポーズに涙腺決壊

 涙の跡も乾かぬままスタートした仙台89ERSとの第2戦ですが、前半は相手のリードを許し一時は10点差に。ともにB1を戦った強豪相手にシーズン初の敗戦も覚悟しましたが、勢いを取り戻したハピネッツが第3クオーターで逆転し、最終的に勝利を収めました。試合後に田口選手をはじめ選手全員が、憲一さんの代名詞とも言える「敬礼ポーズ」をとると、貴賓席で見守っていた憲一さんもにっこり微笑み、それを見てまたもや涙腺が決壊した私でした。

 思えばこれほどアリーナで泣いたことはないと思います。久々に聞いた入場テーマに目頭を熱くし、B2でも変わらぬハピネッツブースターに涙し、そしてブースターのあふれる「憲ちゃん愛」に号泣。県立体育館での素晴らしい思い出がまた一つ増えました。ついでにこの日は帰りの飛行機が台風のため3時間遅れになり、真夜中の羽田空港でまたも涙したのですが、それもまた思い出のアクセントになったと思います。とにかく濃い2日間でした。

 11月からは出張などのため、なかなか遠征の都合がつかないのが残念ですが、ハピネッツがホームにいてもアウェーにいても強力な念を送り続けるつもりです。もちろん、勝利の願掛けである「相手チームの地元名物食い」も続けています。熊本、信州、青森と馬肉の名産地との対戦が続き、この秋に馬刺しを食した回数がすでに4回に達したのは誤算でしたが、なんとか継続していきたいと思っています。次の参戦予定は、天皇杯第3次ラウンド(11月25、26日)です。皆さん、神奈川・平塚でお会いしましょう。

ヤマグチ・ユカ
プロバスケBリーグ、秋田ノーザンハピネッツのアウェー会場を中心に出没するブースター。ツイッターアカウント名「ピンクモジャ」。ユーモアとチームへの愛情あふれるツイートが一部のブースターの間で人気。観戦前は対戦相手の地元の名物料理を食べて気合を入れる。秋田市出身、東京在住のワーキングウーマン。時折かぶる変なお面の下は秋田美人?
ツイッター@crazypinkmoja