[第9回]

初めての天皇杯で秋田を叫ぶ

(2017年12月1日 掲載)
B1富山にリードして終盤を迎えたハピネッツ戦士と、選手を鼓舞するブースター

 今シーズンの開始前からずっと悩んでいることがあります。それはアウェーの遠征プラン。東京から比較的行きやすい都市圏での試合が多かった昨季と比べ、今季は東北や九州での戦いが主となり、昨季以上の時間とお金がかかります。このコラムも「アウェーブースター通信」と銘打っているものの、実は現時点で行けたアウェー戦は10月のアースフレンズ東京Z戦のみ(しかも家から30分)。このままだと「看板に偽りあり」と言われやしないかとビクビク…。11月25日、26日に参戦した天皇杯3次ラウンドも厳密にはアウェーではないのでしょうが、ようやく今季初の泊まり遠征を果たせたので、とりあえずアウェーブースターとしての面目は保てた?のではないでしょうか。

B1勢との闘い

 会場のトッケイセキュリティ平塚総合体育館までは、実は自宅から1時間ちょっと。初日に敗退すれば翌日は予定なしという状況にもかかわらず、私は2カ月以上も前に宿を予約していました。天皇杯は今季、B1チームと対戦できる唯一の機会。1年でのB1復帰を目指すハピネッツにとって、現在の実力を知るまたとない機会なのです。勝つと信じ、じっくり心を落ち着けて観戦したい(ついでに終電を気にせずに飲みたい)という思いからでした。

決戦の地、平塚総合体育館に到着した筆者

 とはいうものの、ハピネッツはこれまでの戦いで負傷者を多く出し、満身創痍の状態。ツイッターでも「無理をしないでほしい」という意見が散見されました。これ以上ケガ人が出ない程度に、そうドンパン節の「どちらもケガねでよかったね」で頑張ってもらえれば…私自身そんな気持ちを抱いたまま第5回戦、富山グラウジーズとの戦いがスタートしました。

 しかしいざ試合が始まってみると、ハピネッツは持ち前の激しいディフェンスで相手に食らいつき、なかなかの好勝負となったのです。相手側はエースが日本代表戦のため不在という事情もありましたが、こちらもコールビー選手が欠場という決して万全ではない状態で、驚くほど競った展開になりました。秋田や関東から会場に駆けつけた推定500人のピンク集団もきっと選手の背中を押したことでしょう。タイムアウト明けには大音量の「ゴーゴー秋田」コールがアリーナに響き渡りました。

 こうして迎えた第4クオーターの終盤、残り0・3秒で同点に追いつかれたときには5月14日の降格の場面と横浜・川村選手の顔が脳裏をよぎりました。あのときも残り1秒で逆転負けを喫したのです。しかし、フリースローを得た小野寺選手が2本のシュートを落ち着いて決め、ハピネッツは劇的な勝利を飾ったのでした。

勝利を収めたハピネッツ戦士に声援を送るブースター

 勝利が決まった瞬間は目の前の出来事が信じられず呆然としていました。そしてジワジワと湧き上がる喜び…!胸がヒリヒリするような試合でやっと手にした勝利。そういえばアリーナで何も食べずに応援するのは初めてでした。自称アリーナグルメマニアの私が食を忘れるほど夢中にさせられたゲームだったのです。その夜の第5クオーター(飲み会)が盛り上がったのは言うまでもありません。秋田からの上京組とともに「ワンツースリー、ゴー、ハピネッツ!」の掛け声で何度も乾杯を繰り返し、勝利の美酒に酔いしれたのでした。

巨人ファジーカスの眼光にビビる

 翌日の川崎ブレイブサンダース戦ではB1屈指の強豪に格の違いを見せつけられ、ここでハピネッツにとって初めての天皇杯は終わりました。私にとっても初めての天皇杯だったわけですが、レギュラーシーズンとはまた違った雰囲気を味わうことができ、本当に行ってよかったと思いました。天皇杯はチアや物販などのエンタメ要素が少なく、また派手な演出もないため、正直物足りないと感じることもありましたが、その分試合に集中することができる環境だったと思います。

 川崎戦の前、ゴール裏の自由席で女子の試合を見ながらタイ焼きにかじりついていると、ベンチ裏のブースター仲間がなにやら後ろを指差して騒いでいます。振り返ると私の後ろに座っていたのは川崎の巨人、ファジーカス選手でした。その迫力、そして眼光の鋭さと言ったら…!タイ焼きをスティールされかねないほどの圧を背中に感じました。やっと去ったかと思うと、今度はユニフォームに着替えてまた同じ席に戻り、座ったままボールをダムダム突き始めたのです。5分ほどでしたが、自分がマッチアップを仕掛けられているようで妙に緊張した時間でした。

 天皇杯が終わり、今週末からはレギュラーシーズンの戦いが再開します。今節の相手、茨城ロボッツは水戸納豆のような粘り強いプレーを見せてくるに違いありません。秋田も納豆どころとして、意地を見せてもらいたいものです。

ヤマグチ・ユカ
プロバスケBリーグ、秋田ノーザンハピネッツのアウェー会場を中心に出没するブースター。ツイッターアカウント名「ピンクモジャ」。ユーモアとチームへの愛情あふれるツイートが一部のブースターの間で人気。観戦前は対戦相手の地元の名物料理を食べて気合を入れる。秋田市出身、東京在住のワーキングウーマン。時折かぶる変なお面の下は秋田美人?
ツイッター@crazypinkmoja