[第11回]

熊本でスターたちの祝祭を堪能

(2018年1月18日 掲載)
スリーポイントコンテストでトップに1点差で惜しくも2位となった田口選手

 1月前半はレギュラーシーズンも小休止。天皇杯に出場するチームを除けば、多くの選手にとっては骨休めの時期となります。しかしブースターは休んでなどいられません。そう、オールスターゲームがあるからです。実力・人気ともトップクラスの選手たちがB.BLACKとB.WHITEに分かれ、華麗な技を繰り広げるオールスター。この夢の祭典に心踊らぬバスケファンはいないでしょう。レギュラーシーズンとは違う、あの熱狂の祝祭に身を置くべく、私は熊本へと飛び立ちました。

 オールスター前日、熊本空港に降り立った私の目に飛び込んできたのは両チーム選手の等身大パネル。ケガで残念ながら欠場となった富樫選手(千葉)と並んでツーショットを撮ると、早くもテンションが上がります。あまりにも興奮したためリムジンバスの切符を買い間違えた挙句、停留所を二つほど乗り過ごしました。田口選手と中山選手が揃って出場とはいえ、秋田から遠く離れた熊本の地にどれだけのハピネッツブースターが来られるのか…ならば東京在住の自分が行こうではないか、皆の代わりに喉から血が出るまで叫ぶのだ!そんな決意で臨んだ熊本行きでしたが、空港ロビーで「あい?切符どごさやったんだべ??」と間延びした秋田弁が聞こえてきたときには、何とも言えぬ気持ちになりました。懐かしいような、心強いような…。上野駅に行った石川啄木もこんな気持ちだったのでしょうか。

横浜・川村選手が「おいさー!」

 この日は、夕方から熊本市内でファン交流会が開催されました。私も開始1時間前に広場に着きましたが、前日には雪も降ったという厳しい冷え込みに歯をガタガタ震わせながら、選手たちを待つことになりました。登場に合わせ、仕込んできたピンクTシャツを見せるべく、決死の覚悟でコートを脱ぐと、隣に座っていた熊本ブースターとおぼしき男性に「わあクレイジー!」とお褒めの言葉(?)を頂きました。300人ほどの観衆の中には見知ったハピブーの顔がチラホラ。田口選手と中山選手の登場には「シゲー!」「タクー!」と力強い声が聞こえ、熊本の小林選手がのけぞるほどでした。選手全員とのハイタッチ会では、ピンクTシャツを見た三遠・鈴木選手や横浜・川村選手らが揃って「おいさー!」と声をかけてくれ、この掛け声がすっかりBリーグに定着したことに驚いたのでした。この日は熊本名物の馬刺し(今季7食目)を食べてスタミナもついたせいか、興奮でなかなか寝つけませんでした。

筆者のピンクTシャツを見て「おいさー!」と声を掛けた横浜・川村選手(左)。中央は秋田・中山選手、右は熊本・小林選手

 そしてオールスター当日。熊本城前の加藤清正像に2人の武運を祈った後、会場となる熊本県立総合体育館へ向かうと、すでに行列が十重二十重に。聞けばチケットは発売開始2分で完売したとか。2年目のBリーグが確実にファンを増やしてきたことがうかがえます。イベントで最も興奮したのはやはり、田口選手の連覇がかかったスリーポイントコンテストです。ピンクTシャツを掲げ持ち、必死に祈りましたが、残念ながら勝利の女神は京都の岡田選手に微笑みました。1点差でのちょっぴり悔しい負けでしたが、田口選手は、bjリーグから続く連覇のプレッシャーに耐え、素晴らしい結果を残してくれました。

 ライトアップされた選手たちがコート両脇の階段を駆け下り、ドローンから落ちてきたバスケットボールを熊本・小林選手が受け止めるというド派手なオープニングの後は、いよいよオールスターゲーム本番です。B.BLACK所属の田口選手、中山選手は横浜・川村選手とコートイン。そう、5月の残留プレーオフで秋田に引導を渡したあの川村選手です。あの時は正直、川村選手の顔を見るのも辛いほどでしたが、中山選手とダブルチームを仕掛けたり、田口選手とじゃれ合ったりする姿は感慨深いものがありました。昨日の敵は今日の友、死にものぐるいで戦った相手はかけがえのない仲間になるのでしょうか。

 「オールスターゲームは真剣勝負ではないから面白くない」。あるバスケファンからそんな言葉を聞いたことがあります。しかし私に言わせれば、これほど真剣なエンターテインメントはありません。トッププレイヤーたちが、一流の華麗な技と、普段の試合では見られない素顔の両方を見せてくれるのです。そういう意味で一番プロ精神を感じたのは横浜の川村選手でした。スリーポイントコンテストで成績の振るわなかった北海道の折茂選手を土下座させたり、相手チームのベンチに座ってスローインをしたり、やりたい放題に見えますが、すべては「熊本の人々を笑顔にする」という使命感ゆえ。一番会場を盛り上げていたのは間違いなく川村選手でした。自分のミッションを的確に理解し、見事に遂行した彼に心から拍手を送りたいです。

震災を風化させない

 試合は123対111でB.WHITEが勝利し、田口選手と中山選手のB.BLACKは残念ながら負けてしまいましたが、試合後にB.WHITEらの選手たちと笑顔で握手しているのを見ると、この場に立てる2人の喜びがひしひしと伝わってきました。前日のイベントでは2メートル超の竹内ツインズの陰に隠れて控えめにしていた中山選手。ルーキーでこの大舞台に立つということはプレッシャーも大きかったはずですが、それ以上に良い経験になったはずです。

 会場の演出そのものは熊本の郷土色がほとんどなく、スタイリッシュなクラブイベントのようでした。だからこそ、最後の熊本・小林選手の挨拶が余計に心に刺さったのです。「復興にはまだまだ程遠い。自分たちが活躍することで震災を風化させない」と力強く語った小林選手。MVPも納得の活躍ぶりで、まさに「むしゃんよか(熊本弁でかっこいい)男」でした。熊本ボーイズたちはきっと地元のヒーローのヘアスタイルを真似るに違いありません。

地元・熊本から出場しMVPを獲得した小林選手

 来年のオールスター開催地は富山に決まりました。来年も絶対に参加するつもりです。なんたって富山湾の寒ブリが、ズワイガニが、マス寿司が私を呼んでいるのです。今週末から再開するレギュラーシーズン後半は強豪との対戦が続きますが、全力でぶつかってほしい。特に今回オールスターに出場した2人には、チームを牽引していってもらいたいです。願わくば、来年のオールスターはB1チームのブースターとして参加できますように。

ヤマグチ・ユカ
プロバスケBリーグ、秋田ノーザンハピネッツのアウェー会場を中心に出没するブースター。ツイッターアカウント名「ピンクモジャ」。ユーモアとチームへの愛情あふれるツイートが一部のブースターの間で人気。観戦前は対戦相手の地元の名物料理を食べて気合を入れる。秋田市出身、東京在住のワーキングウーマン。時折かぶる変なお面の下は秋田美人?
ツイッター@crazypinkmoja