たばこと健康を考えるセミナーin秋田市 たばこは「国民の健康問題」

(2019年12月27日 付)

 「たばこと健康を考えるセミナーin秋田市」が11月6日、秋田市のさきがけホールで開かれました。市民ら約60人が参加し、医師の講演やパネルディスカッションを通じて、喫煙や受動喫煙のリスクについて学びました。県と県医師会、秋田市、秋田魁新報社でつくる実行委員会の主催。セミナーは昨年から各地域を巡回しており、今回が6カ所目。秋田市セミナーの模様を一部紹介します。

さきがけホールで行われた「たばこと健康を考えるセミナーin秋田市」

講演:目からウロコのタバコ講座

たばこでメタボと認知症

県医師会タバコ対策委員長・すずきクリニック院長 鈴木裕之氏

 たばこの常識として次の中で正しいものはどれか? (1)たばこでストレスを解消している(2)たばこの税金で国に貢献している(3)ベランダで吸えば家族に影響がない(4)分煙で受動喫煙は防止できる(5)加熱式たばこは健康への害が軽い―。

 これらは、実際に禁煙外来に受診しに来る患者さんたちの言葉で、すべて不正解。例えば、喫煙するとニコチン血中濃度が上がって「ストレスが解消された」という気持ちが強くなる。しかしニコチンは体内でどんどん分解され、30分ほどでまた吸いたくなり、これを繰り返す。つまり、ニコチンの血中濃度を上げているだけで、決してストレス解消にはなっていないのだ。たばこに関する国の収入については、たばこ税と同じくらい、たばこを理由とする病気や火事などの「喪失国民所得」があり、さらに医療費なども加えると、差し引きで年間1兆2千億円損をしているというデータがある。たばこには微小粒子状物質「PM2・5」などの有害物質が含まれているが、不完全分煙では日本の環境基準の10倍~30倍もの濃度になる。完全分煙でも基準ぎりぎりと、分煙で受動喫煙を防ぐことは難しい。

 たばこの害はまだある。実は、喫煙者はメタボになりやすい。ニコチンには食欲を抑える作用があるため、若い時は食欲が抑えられてあまり食べないが、40代以降にその反動ですごく食べるようになる。また、たばこを吸うと認知症になる割合が2~3割上がり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まるという報告もある。さらに、国内でがんになった人の原因を見ると、35%が食事、30%がたばこ、その他さまざまな要因があり酒は3%。共通点は「口にするもの」で、ここをコントロールすれば3分の2のがんは防げるということだ。

 最後に、たばこは吸っている人だけが病気になって困るのではなく、周囲も害を受ける「国民の健康問題」であることを訴えたい。少しでもにおいがしたら受動喫煙しているということ。そして、紙巻きたばこと加熱式たばこは有害性が同等。たばこはたばこと考えてほしい。

パネルディスカッション コーディネーター:鈴木裕之氏

[秋田県理学療法士会会長 菅原慶勇氏]肺胞が壊れ呼吸困難に

秋田県理学療法士会会長 菅原慶勇氏

 「たばこ煙」が引き起こす、運動時の呼吸困難の仕組みを紹介する。皆さんは呼吸が肺のみで行われている印象があるかもしれないが、脳や胸郭などさまざまな部位も関与していることを知って欲しい。肺の中にはブドウの房のような「肺胞」があるが、たばこを吸っていると肺胞に変化が起こる。肺胞一つずつに壁があったものが壊れて一つの部屋になる。これをBulla(ブラ)=気腫性肺嚢胞=と言う。ブラの特徴は、肺胞の弾力が失われ細い気管支も炎症のため狭くなり、空気が溜まりやすいが出しにくい状態になる。結果、換気機能は低下する。

 いわゆるたばこ病と呼ばれているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者の特徴としては、労作時の呼吸困難感が挙げられる。肺の残気量が増えてなかなか空気を外に出せないという状況。この苦しさを皆さんに体験してもらいたい。1回軽く息を吸い、止めたままそのままの状態でもう一度軽く息を吸い止める。さらに空気を肺に入れたままの状況で呼吸する。常に肺の中に空気がたまっている状態で呼吸するのは大変だと感じるはずだ。

 まとめとしては、たばこの煙が原因で肺胞が壊れ、肺内の空気の捉え込みによる動的肺過膨張が呼吸困難感を引き起こす。できることであれば「たばこは今すぐやめるに限る」ということを提言したい。

[秋田市歯科医師会理事・安倍歯科医院院長 小林崇之氏]歯の着色、口臭悪化も

[秋田市歯科医師会理事・安倍歯科医院院長 小林崇之氏

 たばこによる口腔内への影響はさまざまある。

 まず、歯の着色だが、たばこのヤニや煙。またはコーヒー、ワイン、お茶などがある。着色によって見た目、そして汚れが増える問題もある。着色は歯ブラシでこすっても取れないため、歯科医院で専用の器具を使い除去しなければならない。歯肉の血流不足で歯肉が固くなり表面が角化した状態になることもある。このほか、ニコチンの影響で歯肉の粘膜にタールやメラニン色素が入り色がついてしまうこともあり、これは特殊な薬剤で歯肉を焼いたり、レーザーで除去する。

 さらに、たばこを吸ったり吐いたりすることで、口腔内が乾燥し唾液が減り、口臭がきつくなるという問題もある。また、同世代の非喫煙者の歯周炎・歯肉炎を比較すると、喫煙者のほうが重度だ。口腔内の環境が改善しにくいため、たばこを全く吸わない人と比べると治療しても治るスピードが遅い。

 喫煙は口腔がんの原因の一つにもなっている。口腔がんの死亡率は46・1%。がんでの死亡順位第10位というデータもある。しかし、口腔がんに関しては他のがんに比べて早期発見であれば5年生存率は90%以上と完治が十分可能。がんの早期発見は大事だが、禁煙によって口腔内のがんの予防にもなることを考えてほしい。

[禁煙ばー 縁~ENISHI~ 店主 近藤美奈子氏]受動喫煙ない場を提供

禁煙ばー 縁~ENISHI~ 店主 近藤美奈子氏

 2015年10月、秋田市に「禁煙ばー 縁」を開業した。私は昔、超ヘビースモーカーで1日60本吸っていたこともあった。たばこをやめて20年ほどになる。

 やめたきっかけは、同級生の家に遊びに行ったとき、未成年の子どもが目の前でたばこを吸い始めた。思わず「未成年はたばこをやめなさい」と注意したら、「おばさんはやめられる?」と言われた。そこで「おばさんは大人だから吸ってもいいが、子どもはダメ」と返したら、「大人は自分にできないことを子どもに強要するんだよな」と。つい売り言葉に買い言葉で「私もやめるから、一緒にやめよう」と禁煙に至った。

 禁煙ばーは、愛煙家たちから煙たがられる存在だとは感じる。最初のころは禁煙ポスターを店頭に貼っていたところ、ポスターをビリビリに破かれていたときがあった。しかし今は、「禁煙の店」という認知度が上がり、好意的に受け止めてくれる人が増えたし、周囲に禁煙店も増加している。ただ、会合などの会場選びには、どうしても喫煙者の意見が優先され、禁煙店は選択肢から外れてしまうことがあり理想と現実のジレンマに陥ることも。喫煙者を決して否定はしないが、非喫煙のお客さまに、たばこの煙の害にさらされることなく、「安心して行ける店」と言っていただけるのが救いだ。

秋田県からのお知らせ:受動喫煙防止条例について(県健康福祉部健康づくり推進課)

20歳未満、喫煙エリア立ち入り禁止に

 来年4月から「県受動喫煙防止条例」が本格施行される。条例は国で定めた法律より一歩踏み込んだ内容で、幼稚園・保育所・各種学校などの子どもの施設は「完全敷地内禁煙」が義務化。大学・医療機関・行政機関の庁舎などは「原則敷地内禁煙」。多くの人が行き交う駅や空港などは「完全屋内禁煙」。事務所やホテル、飲食店なども「原則屋内禁煙」で、喫煙を認める場合は専用室設置などの対策が必要となる。 また、多くの集客がある催し物で喫煙場所を設ける場合、受動喫煙が生じない場所を設定するなどの配慮をお願いしている。

 健康増進法では、来年4月以降、20歳未満は従業員であっても喫煙場所に立ち入ることができなくなるので注意が必要だ。さらに喫煙可能な店舗や施設の入り口には、内部に喫煙室がある旨の標識を掲示しなければならない。このようにたばこを吸う人も吸わない人も、自分に合った店選びができるようになればと考えている。