がんの早期発見と5年生存率 

(2020年2月29日 付)

 がんはめずらしい病気ではなく誰もが罹患(りかん)する可能性がある病気です。早期に発見し、適切な治療を行うことで生存率が高まります。定期的にがん検診を受けましょう。

がん5年生存率 改善傾向が続く

秋田県総合保健事業団常務理事 戸堀文雄(とぼり・ふみお)氏

 国立がん研究センターは昨年12月、「がん診療連携拠点病院」など専門的な治療をする全国の病院で2010~11年にがんと診断された患者の5年生存率が66・4%で、09~10年と比較し0・3ポイント増加したと発表しました。この発表からも分かる通り、近年の「がん5年生存率」は改善傾向が続いています。

 少し前の資料になりますが、県の「地域がん登録2006~08年がん5年生存率」では、例えば大腸は68・0%、胃がんは66・9%でした。一方「全国がん登録都道府県データベース」による11年の成績は、本県は大腸が77・8%、胃がんは68・6%。数字を比べると、やはり改善傾向が見られます。改善の要因は、医療全体の進歩に加え、治療のための新薬の登場、検診などで早期発見の人が増えたことが挙げられます。ただ、発見されにくいすい臓がんの生存率は13・9%。大腸がんのように効果がある新薬が誕生し生存率が伸びている部位がある一方で、治りにくいがんもあるということです。

 がんの進行度によっても、5年生存率は変わります。もちろん、進行度が進むほど生存率は下がります。進行度はステージⅠ~Ⅳで表しますが、胃がんで大まかに分かりやすく解説すると、▼ステージⅠ=胃の中にだけがんがある▼Ⅱ=リンパ節転移あり▼Ⅲ=腫瘍が大きく、リンパ節転移の範囲が広がり、隣接する臓器に浸潤▼Ⅳ=遠隔転移あり―となります。部位にもよりますが、近年はステージⅠの場合、ほとんどの患者さんが治る時代となりました。

 5年生存率の改善の一つには、検診などによる早期発見があると話しました。やはり、がん検診を受けていると、死亡率は下がります。国立がん研究センターによる多目的コホート研究によると、過去1年間に胃がんの検診受診がなかった人に比べ、検診受診ありの人では胃がんによる死亡率が半分に低下したという結果が出ています。

 がんの早期発見のために検診を受けることの大切さは、これまでさまざまな場面で叫ばれています。本県でもがん検診受診率の目標を50%としていますが、厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」健康づくり推進課調べでは、2017年度の県のがん検診受診率(対象年齢40歳~69歳)は、肺がん27・1%、大腸がん34・1%、乳がん45・3%など、目標に達していないのが現状です。「いつでも受けられるから受けない」という考えの人もおり、意識を変えるために各市町村では、未受診者に保健師らが電話などで受診を働き掛ける「コール・リコール」を行っています。それにより大きな効果は認められていますが、依然として受けない方もいます。例えば、検診を受けた人の保険料が安くなるなどの政策をつくることができれば、受診率をさらに上げることができるのではと思います。

生存率低くなる「絶望」の気持ち

 がんの早期発見に向けての取り組みの一つとして、県内では胃がん検診に内視鏡検査を導入する体制づくりが進んでいます。内視鏡検査は従来のバリウム検査と比べ、早期がんが発見しやすく、見落としが少ないのが特長で、実際に内視鏡検査を行う人は年々増えています。新年度からは一部の市町村で内視鏡検査が導入され、さらに助成対象にもなる予定です。

 がん患者の生存率が高くなればなるほど、普通に生活したり仕事を続けながら治療を受けている人が増えており、社会の中で「がんとの共生」を考える時代になっています。会社では仕事を軽減し、治療の時間を認めるなど、今後はますます育児と同じようなサポートが必要になってくるでしょう。

 最近の患者さんを見ていて感じるのは、昔よりもイキイキと生活している人がたくさんいること。SNSなどで自分から情報を発信する人もいて、これはとても良いことです。実は、昔の統計で病気の人が「あきらめる」「絶望」の気持ちを持つと、生存率が低くなるというデータがあります。生きがいを持って、自分らしく生きる人が増えれば、生存率はもっと高くなると思います。