世界禁煙デー秋田フォーラム2021 禁煙に取り組もう

(2021年7月9日 付)

喫煙者の気持ちに寄り添う治療を

医療関係者らが禁煙の取り組みについて学んだフォーラム

 「世界禁煙デー 秋田フォーラム2021」(主催=県、県医師会、協会けんぽ秋田支部、秋田・たばこ問題を考える会)がこのほど、秋田市のにぎわい交流館AUで開かれた。「禁煙に取り組もう」をテーマに行われたフォーラムでは、医師2人が講演を行い、ユニークなゆるキャラを使いながら禁煙を促す取り組みや、禁煙指導で有効な最新の面接法などを紹介した。参加した医療関係者ら約40人は、面接の実践などに挑戦しながら禁煙治療について学んでいた。

基調講演:すわん君と学ぶ禁煙指導の〇と× ゆるキャラで禁煙啓発活動

 皆さんは「すわん君」を知っていますか? 日本循環器学会禁煙推進委員会の禁煙啓発キャラクターです。ハクチョウの衣装をまとったかわいらしいゆるキャラです。

北秋田市民病院循環器内科
佐藤 誠 氏

 新型コロナウイルスが流行する前は、全国各地のゆるキャラも参加するイベントに出向き、禁煙に興味のなさそうな家族連れなどに情報提供を行っていました。子どもがすわん君を見て喜ぶと、連れの愛煙家の父親が渋々ですが話を聞いてくれました。

 また、イベント会場では、洋服の胸ポケットに膨らみがあり、たばこを持っていそうな人や、喫煙所から戻ってきた人をターゲットに声掛けを行いました。ある年からは、会場で肺年齢測定を行い、喫煙者はそのまま禁煙無料相談につなげる工夫をしたほか、多くの人に知ってもらうため、SNSでも活動内容を発信しました。

基調講演特別講演禁煙啓発キャラクター「すわん君」

 また、循環器学会認定施設で禁煙外来のない施設からアンケートをとったところ、病院として禁煙外来の開設を希望しているところが約6割にも上りました。一方で、「開設はしたいが、ノウハウが分からず始められない」という声も多く聞かれ、開設の課題となっていることが分かりました。そこで、今年3月の禁煙推進セミナーでは「禁煙外来は面白い! 開設と運営のノウハウを教えます」と題し、会員向けにインターネット配信。開設にあたっての基礎知識や禁煙成功に導くポイント、すわん君も登場する対面式の模擬診療の様子などを紹介しました。

 現在はコロナ禍のため、イベント出張型の市民啓発活動は中止していますが、今後は一般向けの啓発活動の動画配信も定期的に行っていきたいと考えています。

基調講演:あなたの禁煙治療の中心はどの部分?動機づけ面接法のプロセスという考え方
色んな場面で役立つ動機づけ面接

 人間は孤独になると、別の安らぎとつながろうとします。何に対してたばこが必要かを考えると、「不安」から不健康なつながりを求めてしまうのです。こんなときは、家族やパートナーが「大丈夫」「どんなときでもあなたを支えるよ」など、声掛けをして不安を解消してあげるだけでも物質依存がしづらくなってきます。

KUNIX禁煙コンサルタント代表
松尾 邦功 氏

 また、喫煙者にいきなり禁煙のアドバイスをすると、「心理的抵抗」でまず話は聞いてもらえません。「やめるべき」という社会的価値観を押しつけていることになるからです。実際、医療者の「禁煙しませんか」の一言で6カ月以上禁煙した人の割合は、2%増加したにすぎないというデータがあります。さらにイギリスの調査では、喫煙する妊婦に対し、禁煙を促す冊子を配布した場合と、冊子の配布に加え助産師が訪問面接を行った場合を比較すると、禁煙成功率はほとんど変わらないという結果になりました。しかしこれは、面接を行っても意味がないのではなく、問題は、相手の状況をじっくり聞かなかったことにあります。

 禁煙学会で推奨している、医療者から喫煙者へのアプローチ法の元となっているのが、「プロチャスカの行動変容ステージ」です。喫煙者を▽無関心期(相手の気持ちを受け止め共感)▽関心期(相手を否定しない)▽準備期(具体的な禁煙方法を対象者に考えさせる)▽実行期(禁煙の努力を褒める)▽維持期(医療者のサポートが必要なくなる)─ と、五つのステージに分けて対応します。この方法は実践しやすいのですが、一方で医師が考えるステージと、実際の患者のステージにずれが生じることがあります。

 これらの方法で治療がうまく進まない場合、併用して取り入れたいのが、「動機づけ面接法」(MI)。この方法は、実はさまざまな場面で役に立ちます。内容は、▽関わる(相手に共感的な傾聴)▽絞る(「やりたいけど、できない」「分かっているけど止められない」など両価的な気持ちに触れ、どんなゴールが対象者の幸せにつながるか方向性をつけていく)▽引き出す(対象者本人から、より良い変化に向かうための気持ちを引き出し発言させる)▽計画する(具体的な行動)―となります。「プロチャスカ」では、段階ごとに対応していますが、MIは患者のやる気がどこにあっても、「関わる」からスタートします。例えば、プロチャスカの「関心期」「実行期」に当たる患者の場合は、「関わる」を短くし、「絞る」から入るといった使い方もできます。ただ、相手を「喫煙させてやる」というおごりがあると、MIはうまく使えません。相手の気持ちに寄り添った姿勢が重要なのです。

 実際にMIを使う簡略的なアプローチ方法を紹介します。①まず、「たばこをやめようと思ったことは?」など、たばこをやめる方向にもっていくような簡単な質問をする。②返事に対して、その背景を詳しく聞き返す(たばこをやめる理由のみに反応する)。このように対象者の気持ちに寄り添って返事をすると、相手は「自分の気持ちをもっと話してもいいかな」と思うようになります。また、「~なんですね」といった単純な聞き返し(オウム返し)をする際は、語尾を下げて話してください。語尾を上げると、相手は圧迫感を感じるので注意しましょう。

 MIは海外ではすでに広く活用されており、日本国内でも近年は普及してきています。今後は多くの禁煙治療の場で活用してほしいと思います。