県民のがんの特徴 集団検診のススメ

(2022年7月30日 付)

検診で見つかるがん 7割が早期

がん死亡率25年連続ワースト

秋田県総合保健事業団常務理事
神 万里夫氏

 厚生労働省が発表した本県の「がん死亡率」(人口10万人当たり、令和3年)は439・5人で、25年連続全国ワーストとなりました。全国でも高齢者の多い本県は、どうしても死亡率が高くなってしまいますが、年齢構成の異なる地域間で死亡状況が把握できるように調整した「75歳未満年齢調整死亡率」を見ると、実はワーストではありません。

 部位別では胃がんの死亡率が全国と比べ高いのですが、以前よりも県民の塩分の摂取量は減ってきていますし、胃がんの最大の要因であるピロリ菌感染も減少傾向です。ピロリ菌の除菌治療を受ける人も増えているため、ここ1、2年で急激に改善するとはいきませんが、長い目で見ると胃がんが原因で亡くなる人は減ってくると考えています。

 令和元年にがんと診断された県民は、1万27人でした。罹患数の多さでは男性が胃、大腸、前立腺、女性は大腸、乳房、胃の順となっています。全国比で見ると、本県は大腸、胃、食道がんの罹患率が高いのが特徴です。「年齢調整罹患率」(人口10万人当たり、令和元年全国がん登録)では、▼大腸=本県73・6、全国58・2▼胃=本県58・6、全国41・6▼食道=本県11・5、全国10・1となっています。しかし、実は秋田だけが突出して罹患率が高いわけではなく、実は横並びの県が結構あります。これらのがんの要因としては、生活習慣が挙げられます。飲酒や喫煙などに注意が必要です。緑黄色野菜を意識したバランスの良い食事や適度な運動、たばこを吸う人は禁煙治療を行うなどの予防策を行うことで、がんリスクは下げることができます。

 本県のがん死亡率が高い原因として、がん検診の受診率の低さも考えられます。早期発見がポイントになりますが、がん検診や人間ドックなどで見つかるがんの約7割は「早期がん」で、この早期がんのうちに治療することで、治療の目安である「5年相対生存率」が高くなります。例えば、胃がんの場合、限局(がんが最初に発生した臓器にとどまっている)で95%以上、領域(リンパ節や隣接する臓器に広がっている)は約50%、遠隔(がん細胞が、血液やリンパ液にのって離れている臓器に広がっている)になると10%以下になるというデータがあります。さらに自覚症状があって受診し、がんが発見された場合、約45%が領域・遠隔に当たる進行がんとなっています。検診を受けないまま、進行がんが見つかり手遅れになるのは非常に不幸なことです。

 肝心のがん検診受診者は、新型コロナの影響から全国的に落ち込んでいます。日本対がん協会の調査では、2020年からは回復傾向にあるものの、コロナ流行前よりもまだ10・3%下回っています。県総合保健事業団で行っている胃がん検診の受診者は、令和元年が6万455件。令和2年は受診控えや検診の人数制限・中止といった要因もあり、4万4948件と大きく減少しました。昨年から回復傾向にはあるものの、特に高齢者は一度受診が途切れてしまうと検診を受けない人もいるようで、がん発見の遅れによる病気の進行が懸念されています。

検診で小さく見つけて小さく治療

 県はがん検診受診率の目標を50%と掲げていますが、厚労省のデータによると、令和2年度で胃がん15・2%、大腸がん8・5%などと低いのが現状です。事業団では、ウェブで簡単に検診予約ができるシステムを導入し、利便性の向上を図っているほか、徹底した感染対策、会場での待ち時間の短縮など受診しやすい環境を整えていますので、ぜひ、多くの方に検診に来ていただければと思います。

 昔に比べれば医療は進歩しており、さまざまな抗がん剤や治療方法が開発されています。しかし、なるべくなら小さいうちにがんを見つけて、小さい治療で済むのが一番です。そのためには、定期的な検診の受診が重要になります。自らの健康を守るためにも、がん検診を受診してください。