コロナ禍におけるがん検診について

(2022年8月27日 付)

検診を受けなければ、早期がんは見つからない

 このほど、秋田市で「県健康づくり県民運動推進協議会 令和4年度総会」が開催されました。この中で行われた基調講演「コロナ禍におけるがん検診」(東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授・中川恵一氏)の内容を一部紹介します。

コロナ前より検診受診者減少

東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授
中川 恵一 氏

 今、がん検診を受ける人の数が減っています。言い方を変えると、がん患者が減っています。元々向こう15~20年は患者が増えると予想されていましたが、これはどういうことなのか。実は減っているのは、見かけ上です。検診を受けてがんと診断されなければ、がん患者ではないということ。つまり、検診を受けなければ、がんは見つからない。そして患者が減るという恐ろしい状況です。

 がんは国民の病気であり、秋田でも大きな問題です。今、日本男性の65・0%、女性でも50・2%が生涯で何らかのがんと診断されます。私自身、ぼうこうがんの経験者です。男性にがんが多いのは簡単に言うと、生活習慣が要因。タバコや酒、塩分です。特に塩分について本県においては、みそ汁の塩分というよりも、筋子やいぶりがっこなどの塩分です。塩分の非常に濃い食べ物に注意してほしいということを、県民に理解してもらいたいです。

 生涯を通じて見ると男性にがんが多いのですが、実は55歳までは女性の罹患(りかん)が目立ちます。がんは細胞の老化と言える病気ですが、女性の乳がんや子宮がんは、老化とは違った要因で増えます。例えば、子宮頸がんのピークは30代で、これは性交渉によるウイルス感染です。一方、女性ホルモンの刺激が要因となる乳がんのピークは40代後半です。例えば30~40代については、女性のがん患者で男性の2倍です。子宮がん検診は、20歳から受けてほしいのですが、20代前半で検診を受けている人はわずか15%です。

 胃がんの死亡率については、男女合計、男性、女性ともに秋田は全国で最下位というデータがあります。胃がんを減らすには、大きな原因とされるピロリ菌感染と、過剰な塩分摂取に気をつけることが大事で、一番はピロリ菌が胃の中にあるのかチェックすることです。ピロリ菌がいると分かれば除菌治療を行います。しかし年齢が上にいくにつれて、ピロリ菌の陽性者は胃がんになるリスクが高くなりますので、定期的な胃がん検診を勧めます。

早期発見で生存率大幅アップ

 がんは、症状を出しにくい病気です。毎日、人間の体の中にできるがん細胞は1日5千個とも言われています。その都度、免疫細胞が退治していますが、たった一つの死なない細胞が分裂していきます。その細胞が1センチになるまで、多くの患者が10~20年という時間を要します。早期がんとは簡単に言うと、2センチまでとなります。つまり、1~2センチの間に見つけておくことが重要なのです。この1~2センチの時間は多くのがんで2年、早いもので1年です。さらにこの1、2センチでは症状が出ることはありません。ということは、2年に1度、あるいは1年に1度検査していなければ、この1〜2センチの間で見つけることはできないということです。

 早期発見のためのがん検診ですが、日本の受診率は他の先進国と比べて最下位となっています。がん検診によって見つかるのが多いのが、早期がん。検診をせずに、ステージ4の大腸がんが見つかった場合、5年生存率は16%です。しかし、大腸がん検診で便潜血検査をしていたら、5年生存率は98%です。結果を見れば検診の大切さが分かると思います。

 がん検診は、コロナの前と比べて一時、3割近く減少。昨年は少し盛り返したとは言っても、コロナ前から1割以上減少となっています。がん検診が自粛されているということは、早期発見が遅れ、進行がんが増えるということにつながります。がん検診は「不要不急」ではないということを、皆さんの周りにも伝えてほしいと思います。