受動喫煙防止秋田フォーラム2022 ワンチームで「禁煙」目指そう
県民の受動喫煙ゼロを目指す「受動喫煙防止秋田フォーラム2022」がこのほど、秋田市中通のカレッジプラザで行われた。「ワンチームで目指す『禁煙』」をテーマに開かれ、県内の医療関係者ら約50人が参加。講演などを通して、禁煙治療における成功のコツやテクニックを学んだ。フォーラムは県医師会、協会けんぽ秋田支部、秋田・たばこ問題を考える会、県の主催。内容の一部を紹介する。

特別講演:禁煙に導くためのカウンセリングテクニック―行動を起こさせるタイミングを知ろう―
支援はプロセスで考えよう

成人看護学 療養生活支援
谷口 千枝 氏
今回は主に「禁煙支援の基本的な考え方」「やる気のない人への禁煙支援」「やる気のある人への禁煙支援」の三つを紹介していきます。
まずは「行動変容」として、皆さんに質問です。これから毎日「部屋に掃除機をかけて」と言われたらできそうですか? 答えは「余裕でできる」「頑張ればできる」「ちょっとなら」「無理」の4択。この一つの行動でも人によって反応はさまざまです。できると思っている人と無理と思っている人に同じ声掛けをして、同じ結果が起きるわけがありません。私たちは、相手の行動への関心度に合わせて支援をしていくことが重要になります。
禁煙支援を行う技術として「プロチャスカの変容ステージ」があります。▼無関心期▼関心期▼準備期▼実行期▼維持期―の5段階のステージがあり、その特徴に合わせた指導をすると、患者さんが行動変容を起こすというものです。喫煙者はたばこを吸いながら、何度もステージを行き来して、生涯禁煙までにこの行動を6~7回繰り返すとされています。失敗を繰りかえしながら、ゴール到達を目指します。
やる気のない「無関心期」の人への禁煙支援の極意の一つ目は、喫煙の害を絶対に言わないこと。「たばこを吸ってもがんにならない人もいる」など、〝あ~言えばこう言う〟がひどくなり、話を聞いてもらえなくなります。二つ目は共感的な態度を崩さず、自分の弱さを見せても大丈夫な相手だと思ってもらえる関係性を作ります。三つ目は、感情を動かす。そのためには指導する側が「禁煙の話をしてくれてうれしい」などの感情を伝えることが重要です。最後は確認をとってから、「いつか役立つ情報提供」をします。
「関心期」は、「アンビバレンス」という「禁煙したい」「たばこを吸い続けたい」という相反する感情を同時に持つ時期です。アンビバレンス時は、指導をすればするほど逆の方向に患者は変容していきます。本人の言葉から動機付けにつながる言葉が出るよう、促すことが必要になります。
最後は、やる気のある人への禁煙支援の方法です。「準備期」は、具体的な禁煙法について話し合い、何をどんな場面で実行するか話し合います。「実行期」では禁煙のためのスキルを獲得し、自己効力感を高めます。例えば「ステップバイステップ法」は一度にハイレベルな目標を達成するのではなく、小さな目標を立てて段階的にクリアしていきます。禁煙だったらまずは3日、達成できたら次はもう何日頑張りましょうという感じで少しずつ成功体験を積んでいきます。また、「刺激コントロール」は、不健康な行動を起こすきっかけとなる刺激を統制し、健康行動のきっかけとなる刺激をつくる方法です。「灰皿を片付ける→たばこを吸わない」などです。
「維持期」は自立を促す時期ですが、ここでステージが戻ってしまう人もいます。禁煙はプロセスということを忘れずに、その失敗から何を学んでいただくかが禁煙成功につながってきます。禁煙治療に関わる私たちは「演出家」でなければいけません。患者さんがどうしたら楽しく禁煙プログラムに取り組めるのかを考え、サポートしてほしいと思います。
基調講演:禁煙治療における看護師の役割と成功のコツ
5回まで通院が成功のカギ

古仲 晶子 氏
すずきクリニックへのここ1年の禁煙外来受診者数は、60人。初回は予約不要でいつでも受診が可能で、最初は看護師が30分間レクチャーし、その後医師の診察となります。2回目以降は予約制で禁煙治療アプリも導入しています。
当院の禁煙治療成績(1224例)のまとめでは、2010年のたばこ値上げ時に受診者が150人を超えましたが、その後は90人台を推移、加熱式たばこの販売開始からはさらに減少し、近年は約60人となっています。禁煙成功率は2006年の開院当初は40%と振るいませんでしたが、いろいろな工夫を重ね最近では70%弱となっています。
06年8月から約12年間の禁煙治療成績を解析し、禁煙治療成功の要因を探りました。
性別で見ると男性58%、女性45%と男性の成功率が高く、年代別では高齢者が高い傾向でした。女性と若い人には、より丁寧な診療指導が求められると分かりました。禁煙治療は合計5回の受診が必要です。受診回数と禁煙成功率の関係を調べてみると、受診回数が増えるほど禁煙成功率が上がりますので、いかに5回目まで通院してもらうかが重要なカギとなります。
禁煙治療は、5段階の変容ステージに当てはめて行います。禁煙外来初診時の工夫としては、例えば吸いたくなったときの対応を「深呼吸、水、氷、ガム、キャラメルなどを口に含む」など具体的に示します。ストローをたばこの長さに切って、口に加える「エアたばこ」も効果があるようです。2回目以降は、禁煙に成功していたら褒め、失敗していても怒らずに状況を聞き、解決策を示します。5回の通院を終え、禁煙成功となったときは「卒煙証明書」を発行。クリニック内に掲示している禁煙達成者数にカウントして喜びを共有しています。
私たち医療者は、喫煙者にたばこのない生活に関心を持ってもらい、不安なく禁煙達成に取り組めるように喫煙者に寄り添いながら、禁煙治療に携わっていくことが求められていると思います。

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