がんを正しく知ろう 中学校「がん教室」
県内の生徒たちにがんを身近な問題として捉え、正しい情報を身に付けてもらうことを目的とする「がん教室」がこのほど、潟上市の天王中学校で開かれました。同中の2年生88人が、医師やがん患者の講演を聴講。日本人の2人に1人が罹患(りかん)すると言われているがんの予防法や向き合い方などを学びながら、命の大切さを考えました。

「大切な人」のためにできることは
がん検診の重要性 家族にも伝えよう

がん教室では始めに、医療従事者の視点から市立秋田総合病院の片寄喜久医師が「がんは怖くない」と題して講演。アニメ動画などを流しながら、がんができる仕組みや予防法などを分かりやすく解説しました。
片寄医師は「成人の体は約60兆個の細胞でできており、毎日数千個が分裂して遺伝子を複製しているが、ミスも発生する。ミスを修復できなかった細胞が大きくなってがんになる」と説明。日本人にがんが増えた要因については▼肉食中心の食事の欧米化▼たばこ・お酒の飲み過ぎ▼肥満―などを挙げました。その上で「生活習慣ががんになる要因の一つ」と話し、健康的な生活を送ることががんのリスク減につながることを紹介しました。
また、日本人のがん検診受診率が先進国で最低という事実にも触れ、「近年は新たな治療法もたくさん出ているので、がんが小さいうちに発見できれば完治する可能性が高まる。症状が出てからでは手遅れになる可能性も増えるので、何もなくても検診を受けることが大事。家に帰ったら必ず家族にも伝えてほしい」と真剣な表情で語りました。
目に見えない苦痛 抱える人が身近に

後半は、秋田市の佐藤俊行さん(65)が自身のがん闘病生活について講演。佐藤さんは2011年に受けた健康診断をきっかけに大腸がんが見つかり、外科手術で腫瘍を摘出。根治したかと思っていた2年半後に肺などへの転移が発覚し、「ステージⅣ」と告知されました。
当時、医師からは「手術ではがんを取れない。何もしなければ1年は持たない」と言われ「とてもショックを受けた」という佐藤さん。これまで136回ものつらい抗がん剤治療に耐え、闘病生活を続けています。「私が話している姿を見ると元気そうなおじさんに見えるかもしれませんが、今も体はとてもきつい状態。私よりも大変な人だと人工肛門の人もいます。目に見えない苦しみを抱えている人が身近にいることを知ってほしい」と訴えました。
さらに、佐藤さんは義足や人工関節を使用したり、内部障害を持つ人など、外見では分からなくても援助や配慮を必要とする人であることを知らせる「ヘルプマーク」を紹介。「がん患者でもヘルプマークを付けているときがあります。人を見た目で判断せず、皆さんの回りに困っている人がいないか関心を持ってほしい。そして、周囲の人の支えがあってこそ、皆さんが毎日元気に暮らせていることに感謝してください」と生徒たちに語りかけました。
がんから命を守る行動の大切さ確認

最後にグループワークが行われ、生徒たちは「自分の大切な人ががんで亡くならないために何をしたら良いのか」をテーマに意見を出し合いました。グループ発表では「親がたばこを吸っていたら『吸わないで』と言う」「がん検診を勧める」「一緒に運動をする」「がんになったら励ましの言葉をかける」などの意見が出され、自身を含めがんから命を守るための行動の大切さを確認しました。


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